研究課題/領域番号 |
17K05218
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研究機関 | 埼玉大学 |
研究代表者 |
小野 肇 埼玉大学, 理工学研究科, 准教授 (70467033)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 共形ケーラーアインシュタイン・マックスウェル計量 |
研究実績の概要 |
本研究の目的はApostolov-Maschlerにより定義された共形ケーラーアインシュタイン・マックスウェル計量(以下cKEM計量と呼ぶ)の存在問題を、従来のケーラー幾何の手法に加え、佐々木幾何の研究において培った視点に基づき進展させることである。 平成29年度は次の結果を得た(共に二木昭人氏(精華大学)との共同研究の結果である):(1) cKEM計量の存在のための障害として、Apostolov-MaschlerによりcKEM-二木不変量が定義されたが、これが「体積関数」の第一変分に本質的に等しいことを示した。これをトーリック曲面、特にヒルツェブルフ曲面の場合に応用することにより、cKEM-二木不変量が消える例を発見した(これは今まで知られていなかった)。 (2) 任意の次元において非ケーラーなcKEM多様体の例を無限個構成した。(今までは、複素2次元の例しか知られていなかった。) (3) 松島-リヒネロビッツにより、スカラー曲率一定ケーラー計量を許容する偏極多様体の自己同型群はreductiveであることが知られている。また、この主張はextremalケーラー計量の場合にCalabiによる自己同型群の構造定理にまで拡張されている。我々はextremalケーラー計量をcKEM版に一般化し、そのような計量が存在するときの、自己同型群の構造定理を証明した。その系として、cKEM計量が存在すると自己同型群がreductiveであることを証明した。(当初予定では、この内容は平成31年度に研究を進める予定であったが、平成29年度に証明することができた。)
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画では、高次元で非ケーラーなcKEM計量の具体例の構成および、Calabi type ではないambitoric cKEM曲面の具体例の構成をする予定であった。
前者に関しては全ての次元において構成することができた。一方、後者については達成することができなかった。
そのかわり、平成31年度に研究を予定していた松島-リヒネロビッツ-Calabiの定理のcKEM版を証明することができた。
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今後の研究の推進方策 |
まず、平成29年度解決できなかった問題(Calabi type ではないambitoric cKEM曲面の具体例の構成)に引き続き取り組む予定である。また、平成29年度の研究により、cKEM計量を、自然な形で、より一般化できそうであることがわかってきたので、その枠組みで一般化されたcKEM計量の存在問題、例の構成を試みる予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度は、当初予定より出張回数が少なく当該研究費が生じた。 次年度は、研究集会出席に使用する旅費に加え、共同研究者(二木昭人氏(精華大学、中国))との研究打ち合わせも予定しており、その旅費として支出を予定している。
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