研究実績の概要 |
4次元Lorentz多様体内の平均曲率ベクトルが零である空間的曲面の等方性および強等方性を定義した. これらは4次元Riemann多様体および4次元ニュートラル多様体における定義の類似物であり, 特別な局所複素座標の取り方に基づく. また後者は混合型構造 (複素構造の類似物)を必要とする. 一般には, 等方的であることは, 曲面上の複素4次微分Qが零であるまたは強等方的であることと同値である. Q≡0は第二基本形式が零または光的であることと同値であり, またリフトの共変微分による特徴づけができる. リフトの曲率テンソルによる像が零であるとする. このときQは正則である. 曲面が全測地的な点を持たないとする. 法接続の曲率およびQが零ならば曲面は強等方的である. また, 強等方的ならば, 法接続の曲率および曲面の接続形式の余微分は零であり, 第二基本形式はこれらを整合条件とする過剰決定系の解により構成される. 空間が4次元Lorentz空間形ならば, 等方性, 強等方性およびQ≡0は互いに同値である. 曲面が時間的な場合には部分的に類似の結果が成り立つが, 一方で等方性と強等方性は同値であり, Qが恒等的に零ならば全測地的である. また, 空間が空間形であり曲面が等方的ならば全測地的である. トーラス上の階数4の向きづけられたベクトル束が計量および計量に適合する接続を持つとする. ベクトル束に付随するツイスター空間が偏水平な切断を持つならば, 既に与えられている接続に関するある接続についてその切断は水平になることを示した. この切断に対応するベクトル束の複素構造は後者の接続について平行である. 計量がニュートラルな場合にも調べ, 偏水平な切断が空間的, 時間的および光的な場合のそれぞれについて同様の結果を得た. 本研究は木原拓夢氏 (当該年度修士号取得)との共同研究に基づく.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当該年度に予定していた研究は, 上記「研究実績の概要」に記した4次元Lorentz多様体におけるものであり, いろいろと容易ではなかったが結局うまくいったと考えている. ここまでであれば, 上記区分を「おおむね順調に進展している」としただろう. 実際には, 木原氏が作成した修士論文に基づいて, トーラス上の階数4のベクトル束に付随するツイスター空間の切断についての成果を得ることができたため, 上記区分を「当初の計画以上に進展している」とした.
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今後の研究の推進方策 |
まず, 空間の次元が4の場合については, 当該年度までの研究によって平均曲率ベクトルが零である空間的または時間的曲面の等方性に関する体系的な理解、知見を得ることができたと考えている. 今後は, 等方的でない場合やさらには平均曲率ベクトルが零ではない場合についても調べたい. また, 曲面のツイスター・リフトについてのBryantによる議論を参考にして, 2次元球面上の階数4のベクトル束に付随するツイスター空間が水平な切断を持つ場合を調べたい. また, 今までは空間の次元を主に3または4としていたが, 今後は5, 6或いはそれ以上の場合も調べたい. 今までの研究成果の多くが局所的な (各点の近傍における)ものであるが, 曲面がコンパクトな場合も念頭におきながら研究を行いたい.
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