研究実績の概要 |
令和元年度も平成30年度に続き、最小跡に関する5つ(A,B,C,D,E)のテーマをバランス良く発展させるように研究を進めた。結果的に、非凸多面体の最小跡をうまく定義すると、その構造が、多面体形状の情報を持つようにでき、細胞の形状等を調べることへの応用の可能性があることが分かり、 (B)、(D)に関して大きな進展が見られた。 (A) Jacobi の last statement の一般化の論文は何回か再投稿を繰り返しているが、やっと概ね受理されそうな投稿先が見つかった。 (B) 非凸多面体の最小跡の関して、リーマン多様体の最小跡のような性質を持たせるために、最小跡の定義を少し修正し、その構造と本質的最小跡の構造を定め、多面体のハンドル分解を調べ、論文にまとめつつある(吉安氏との共同研究)。 (C) 凸体において直径を与える2点の一方になる点を特徴付ける条件を調べ、論文にまとめ受理された(Y.Liping, C.Vilcu T.Zamfirescuとの共同研究)。曲面の最小跡の長さと曲面の面積の間に等周不等式的な関係式が成立することが分かり、議論を進めている(C.Vilcu との共同研究)。Alexandrov の予想とも関連して興味深い。 (D) (B)によって一般の多面体の最小跡を扱うことが出来るようになったので、多くの細胞形状のデータから特異的な変位をしている細胞が持っている最小跡の構造を見つけだすことが出来るのではないかと思われる。今後の研究が期待される(吉安氏(京大ゲノム研究所)との共同研究)。 (E) 非凸多面体の最小跡の定義を模倣することによってグラフや複体の最小跡の定義に関しても考察した。
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