| 研究課題/領域番号 |
17K05231
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| 研究機関 | 明治大学 |
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研究代表者 |
今野 宏 明治大学, 理工学部, 専任教授 (20254138)
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| 研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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| キーワード | 平均曲率流 / ラグランジュ部分多様体 / モーメント写像 |
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| 研究実績の概要 |
平均曲率流は，リーマン多様体の中で，部分多様体を最も効率よく体積を減少させる方向に変形させる「変形族」であり，多様体上の弱放物型偏微分方程式の解として表される．一般に，平均曲率流は有限時間内で特異点をもつが，この特異点の性質を調べることが目標となる．部分多様体の余次元が高いと，技術的な困難が増すが，「入れ物」のリーマン多様体や部分多様体に有効な幾何学的な制限が付くと，平均曲率流の挙動も制限される．
「入れ物」のリーマン多様体がカラビヤウ多様体で，部分多様体がラグランジュ部分多様体のときは，平均曲率流の挙動が大きな制約を受けることが知られている．このようなカラビヤウ多様体内のラグランジュ平均曲率流の解析をするにあたり，特有のテンソル計算が必須となる．計算の基礎の本質的な部分は多くの研究者にとって共通であるが，実際の細かい記号であったり，いくつかのステップで重要となる式（例えばSimonsの恒等式などはラグランジュ平均曲率流においては，少し簡略化される．）の表記は，個々の研究者ごとに違いがあるため，研究者ごとにその基礎を整備する必要がある．今年度はその整備を行い完成させた．
2019年の始めにQiu-Sunにより，「入れ物」のリーマン多様体が４次元のハイパーケーラー多様体のときに，部分多様体にはとくに制限を付けなくても，平均曲率流に大きな制約がある，というプレプリントがarXiveに掲載された．この論文を，必要な部分は証明を大きく書き直すなど，時間と労力をかけて徹底的に検証し，理論を再構築した．「入れ物」のリーマン多様体が４次元のハイパーケーラー多様体の場合には，ある性質をもつラグランジュ平均曲率流や，シンプレクティック平均曲率流においてI型の特異点が現れない理由が，より高い視点から統一的に理解されることがわかった．このアイディアの本質を抽出して，一般化することを検討している．
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| 現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
今年度から研究代表者は本務校である明治大学理工学部を運営するスタッフの一員となった．これは，周囲からの要請でなるものであり，自分でコントロールできるものではない．しかも，大きな責任を負うことになるため，自分のことは犠牲にして学部の運営に携わらなければならない．このようなことで，さまざまな全学の会議に出席するとともに，さまざまな学部内の行事や会議を運営することとなった．そのため，研究時間の確保が極めて困難になった．このように，研究に集中することが不可能である状況下で何をするべきかを考えた結果，研究時間の確保ができるようになった場合にただちに研究に没頭できるための準備をすることが重要と考えた．具体的には，①自身の研究の基礎を整理することと，②自身の研究に関連する新しい話題について理解を深め，その発展の可能性について考えておくことが必要であり，そのようなものであれば限られた研究時間で実行可能であると考えた．
①として実行したことが，研究概要で述べた，ラグランジュ平均曲率流におけるテンソル計算の基礎の整備であり，②として実行したことが，４次元ハイパーケーラー多様体における２次元部分多様体の平均曲率流の理論の再構築である．また，現在②として，semi-flatなカラビヤウ多様体におけるラグランジュ部分多様体の平均曲率流の例を前年度までの研究成果に基づいて構成し，そのミラーを考察している．研究代表者の現在の研究環境においては，可能な限りの時間を費やし，今年度の始めに計画したおおよその内容を実行することはできた．けれども，５年間の研究計画という視点においては，研究がやや遅れていると考えられる．
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| 今後の研究の推進方策 |
研究代表者は，昨年度に引き続き，今年度も学部を運営するスタッフの一員となった．今年度はコロナウイルス感染症の影響により，学内のさまざまな行事に対して例年とは異なる対応が求められるため，多くの時間をその対応に費やさなければならない．そのため，研究に費やせる時間には相当の制約が出てしまうことが予想される．このような状況ではあるが，昨年度に蓄えてきた研究の準備を成果に結び付けてゆきたい．
まず，４次元ハイパーケーラー多様体内の平均曲率流の挙動を調べたい．そのためには，特異点についての理解を深めたい．I型の特異点が生じないための十分条件については上述のQiu-Sunの仕事で与えられたが，この仕事が示唆することは多いと考えられる．一方で，研究代表者はI型の特異点が生じる場合の具体例を構成しており，I型の特異点については挙動を詳細に記述することができる．I型の特異点が生じる場合と，そうでない場合の本質的な違いを明らかにしたい．
進捗状況において記載したように，昨年度末から，semi-flatなカラビヤウ多様体におけるラグランジュ部分多様体の平均曲率流を研究している．まず，前年度までの研究成果をsemi-flatなカラビヤウ多様体に適用できることに気付き，具体例を構成することができた．そのミラーは，別のsemi-flatなカラビヤウ多様体あるいは，その複素部分多様体上の接続付きの正則直線束となる．特殊ラグランジュ部分多様体と変形ヤンミルズ接続との対応は知られており，変形ヤンミルズ接続と安定性の関係もごく最近明らかになりつつある．これらからラグランジュ部分多様体の安定性を具体的に調べるきっかけが得られることを期待している．
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| 次年度使用額が生じた理由 |
今年度から研究代表者は本務校である明治大学理工学部を運営するスタッフの一員となった．これは，周囲からの要請でなるものであり，自分でコントロールできるものではない．しかも，大きな責任を負うことになるため，自分のことは犠牲にして学部の運営に携わらなければならない．このようなことで，さまざまな全学の会議に出席するとともに，さまざまな学部内の行事や会議を運営することとなった．その結果，研究に費やせる時間の確保が極めて困難になった．時間の確保が困難であり，学内での担当授業のコマ数まで減らすことが許されている，というような状況である．夏季休暇にはなんとか時間を確保して研究会に参加することができたが，学期中に出張することは，ほぼ不可能であった．３月には研究会に参加できる時間が確保できたので，出張する予定であったが，今度はコロナウイルス感染症の影響で，研究会が中止になった．このような要因が重なり，情報収集や，研究連絡のための出張をすることが全くできなかった．そのために，今年度の使用計画を十分に実施することができず，次年度使用額が生じた．
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