研究課題/領域番号 |
17K05233
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研究機関 | 福岡大学 |
研究代表者 |
佐野 友二 福岡大学, 理学部, 教授 (00399792)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | トーリックファノ多様体 / ケーラーアインシュタイン多様体 / 二木不変量 / ファノ多面体 |
研究実績の概要 |
本年度は,以下の結果を得ることができた. 昨年度に引き続き,トーリック・ファノ多様体上の二木不変量について調べた.トーリック・ファノ多様体において,モーメント写像の像による多面体(モーメント多面体)の重心が二木不変量に対応していることが知られている.昨年度において,モーメント多面体の重心が原点であるとき,その極双対多面体(ファノ多面体)のある不変量が消えることを証明した.本年度において,その結果をpolymakeと Obro-Paffenholz の8次元までのトーリック・ファノ多様体のデータベースを用いて,モーメント多面体の重心とその極双対の不変量を計算した.その結果,7次元まで昨年度示した結果が正しいことを確認した.逆に,ファノ多面体の不変量が消滅するが,モーメント多面体の重心ではない例を6次元以上で見つけた. ケーラーアインシュタイン計量の存在のための障害として,二木不変量の消滅の他に,正則自己同型群が簡約群であるという松島の定理がある.トーリック幾何において,正則自己同型群の構造はトーリック多様体のルートで決まることが知られている(Demazure).ファノ多面体の不変量が消えているとき正則自己同型群が簡約であることを松島の定理を経由せずに示した.また Polymake と Obro-Paffenholz のデータベースを用いて,3次元以上において逆が成り立たない例を見つけた. 佐藤拓氏(福岡大),須山雄介氏(大阪大学)と共同研究において,7次元以下のなめらかなトーリック2ファノ多様体の分類を行なった.その結果,7次元以下のなめらかなトーリック2ファノ多様体は射影空間のみであることが分かった.この研究においても,本研究で得た知見が役に立った.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2018年度より,当初の計画とは異なるが,トーリック・ファノ多様体の構造を調べることに重点をおいて研究を遂行している.2019年度はトーリック・ファノ多様体のモーメント多面体とその極双対多面体であるファノ多面体の不変量の関係について具体的な結果を得られた.2019年度においては,2019年度の研究結果の中で得た知見(モーメント多面体のファセットの内点を着目したトーリック・ファノ多様体の構造解析)を標準ケーラー計量以外の問題(トーリック2ファノ多様体の分類)への適用の可能性を見出せたことは,本研究の意義を示す上で重要であると考えている.またPolymakeとそれに付随するデータベースを扱うことで,2018年度に得た結果を計算機によって検証できるようになったという意味で進展と言える.
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今後の研究の推進方策 |
来年度が本研究の最終年度になるので,現在まで得られた結果を論文にまとめて投稿できる形にすることを目指す.現在まで,一部の結果は論文にまとめ,細部の確認の段階にある.特に Polymake を用いた検証(8次元の場合の検証)では,現在用いているコンピューターの処理能力では時間がかかりすぎることがわかっている.そのため,最終年度ではあるが,コンピューターの購入を予定している.また,本研究課題で得られた結果の評価を得るために,専門家との交流(研究打ち合わせ)を行い,結果の検証を行う予定である.しかし,状況に応じて,研究打ち合わせの方法をオンライン・ミーティングにするなどの方策も視野に入れておく.
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次年度使用額が生じた理由 |
出張スケジュールの調整のために,想定よりも出張による支出が少なかったために次年度使用が発生した.次年度使用による余剰分は,数値計算のためにコンピューターの買い替え,論文作成のための電子機器の購入,本研究で得られた結果の評価・意見を収集するための研究打ち合わせや研究者招聘のために使用する予定である.研究打ち合わせの出張や研究者招聘が難しい場合には,状況に応じて代替の方法をとることも視野に入れている.
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