研究課題/領域番号 |
17K05236
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
足立 二郎 北海道大学, 数理・データサイエンス教育研究センター, 学術研究員 (20374184)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | グルサ構造 / 多重ラウンド手術 / ホモトピー原理 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は,接触構造などの幾何構造に関する微分トポロジーの統一理論の創生を目指すことにある.2019年度に行った研究では,Goursat多重ラウンド手術を用いたGoursat多様体の研究を行った.そして,様々なタイプの接分布構造に対するホモトピー原理の研究への可能性を探った. Goursat構造とは,多様体上の2次元の平面場で,Lieかっこ積で次元が1ずつ増えて,接束全体まで次元が上がるものである.とくに多様体が3次元の場合は接触構造であり,4次元のときにはEngel構造とよばれる.接触構造の研究は発展を続ける分野であり,Engel構造の研究は近年注目を集めている.Goursat構造の研究は,大域的な幾何学としては,今後の発展が重要であると期待される. 本研究の手段の1つは,私自身が導入した多重ラウンド手術である.多重ラウンドハンドルとは,通常のハンドルと高次元トーラスとの積の形をしたハンドルである.前年度の指数1に対し,今年度はその他の指数に対してもGoursat構造を構成し多様な手術が可能になった.本研究のアイディアの1つは,接触構造の柔軟性とシンプレクティックラウンドハンドルに関する私の理論にある.今年度の研究はそこに於ける手術の拡張をも意味し,さらなる発展を期待させる. また,柔軟性の議論を展開させるために,Engel構造の特徴を抽出する新たな表現法を導入した.この方法と上記のGoursat多重ラウンド手術を用いて,Engel構造の柔軟化のモデルを構成した.これはEngel構造にとどまらず,さらなる拡張を見据えるものであり,研究は進行中である.また,様々な幾何構造に関するホモトピー原理の議論への展開も進めている. このように,今後の発展が期待できる研究対象に新たな概念を導入することができ,今後のこの分野の発展のために重要な意義を感じている.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
特殊な手術の方法をアプローチ方法の1つとして,(高階)接触トポロジーの概念を統一して展開していくことが本研究課題の目的である.その意味で,Goursat多重ラウンドハンドルを全ての指数で構成できたことは,計画に沿った進展であると考えられる.世界におけるEngel構造の研究の予想以上の進展に研究計画の修正も考えた.しかし,当初のアイディアから周りの研究報告を含むより豊かな考察ができそうだとわかり,予定通りの研究計画の続行が有効であると考えられる.Engel構造の研究の急展開に対応するために,高階に比べ高次元の研究が薄くなった感は否めない.しかし,更に一般のホモトピー原理の議論への足がかりもできたので,全体では概ね順調であると考えられる.
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今後の研究の推進方策 |
まずは,Goursat多重ラウンド手術を用いた考察を続けたい.柔軟性に関する考察を進め,4次元の場合としてEngel構造の微分トポロジー的な考察にも寄与したい.また,その他の様々な幾何構造の大域的な議論することを考えている.そのための基本的なホモトピー原理の考察には着手済みである. 様々な幾何構造に関しては,それぞれの専門家の方々との共同研究を考えている.そのためのごく初歩的な議論を少し始めているので,それを発展させていきたい.難しい時期ではあるが,国内外の共同研究者たちと連絡を密にとり議論を深めていきたい. 研究計画に直接には書かなかった新しいアイディアも取り入れて行きたい.Bott-Flore理論について,京都大学数理解析研究所の川崎盛通さんから教えてもらった.川崎さんは私の企画した連続講演会の講師としてお招きし,北海道大学の学生・院生さんに対してシンプレクティック幾何学と擬準同型についてお話しいただいた.自分も新しい知識を取り入れながら,若い人たちのためになることも考えていきたい.
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染症の流行により,研究集会や共同研究のための出張が無くなったため,予定していた予算の使用が無くなった. 2020年度に状況がどの様になるかはわからないが,共同研究,研究発表や情報収集のための旅費等に予算を使用したい. また,インターネットを使った情報交換のための設備が少し弱いので,研究のスムーズな遂行のために整えることも考えたい.
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