本研究の大きな目的は,幾何構造に関する大域的微分トポロジーの統一理論の創生を目指すことにある.本研究では特に,接触構造,Engel構造の一般化としてのGoursat構造に関する考察を目標としていた.新型コロナウイルス感染症のまん延により進行が遅れたが,すでに期間を延長していることもあり,この方面での考察は進んできた.2023年度に行った研究では,Goursat構造の存在のための必要十分条件の考察を行った.延長はあったが,当初の計画の目標にまずまず到達出来たと言えよう. Goursat構造とは,多様体上の2次元の平面場で,Lieかっこ積をとることで次元が1ずつ増えて,その多様体の接束全体まで次元が上がるものである.とくに多様体が3次元の場合は接触構造であり,4次元のときにはEngel構造とよばれる.接触構造,Engel構造の研究は発展を続ける分野である.Goursat構造の研究は,大域的な幾何学としては今後の発展が重要であると期待される. 本研究の手段の1つは,ホモトピー原理の考え方である.Goursat構造の「微分」に関わる条件を忘れた「形式的な」構造を考え,その近くに真にGoursat条件をみたした構造が存在するかを考察する方法である.いくつかの構造でこのようなアイディアがうまく行っているが,特別な道具があるわけではない.Goursat構造では,それ独自の手法を用いる必要がある訳である. また,Goursat構造の存在等に関して,国際共同研究を進めている.本研究の一般の高階のGoursat構造の場合についての考察の,接触構造,Engel構造などの低次元へのフィードバックには,この分野の研究の重要な展開が期待できる.今年度は海外の研究者と直接に議論する機会も持て,別々の研究を結びつける可能性を見つけることが出来た.
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