研究課題/領域番号 |
17K05237
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
秋田 利之 北海道大学, 理学研究院, 教授 (30279252)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | Artin群 / Coxeter群 / カンドル / ラック / コホモロジー / スペクトル系列 |
研究実績の概要 |
研究代表者とYe Liuとの共同研究に基づく論文Second mod 2 homology of Artin groups (Ye Liuとの共著)が高水準の学術雑誌に掲載された。同共同研究はいわゆるK(π,1)予想を用いずにArtin群の2次のmod 2ホモロジー群を完全に決定したもので、結果は内外の専門家より高い評価を得ている。 本研究の開始以前に、研究代表者はCoxeterカンドルの随伴群が (1) Coxeter群の自由アーベル群による中心拡大 (2) Coxeter群の交換子群と自由アーベル群の半直積の二つの構造を併せ持つことを示していた。これらの結果を論文に纏め投稿したが現時点では掲載に至っていない。本年度はまず随伴群の有理数係数コホモロジー環を完全に決定した。決定には上記(1)と代表者が以前得ていたCoxeter群の有理数係数コホモロジーに関する研究が効果的に用いられている。Coxeter群のルート系はラックと呼ばれる代数構造を持つ(Coxeterラックとよばれる)。CoxeterラックはCoxeterカンドルの「二重被覆」になっている。本研究ではCoxeterラックの随伴群がCoxeterカンドルの随伴群と一致することを示した。そこで本年度新たに得られた結果を含む形で論文を改稿中である。 Artin群のK(π,1)予想について予備的な考察を行った。具体的には、本研究では代数トポロジー的な手法として、Salvetti複体の普遍被覆の代数的モデルに収束するスペクトル系列を用いてK(π,1)予想をにアプローチするが、本年度は具体的なArtin群に対してスペクトル系列の振る舞いを調べ、いくつかの技術的な結果を得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Coxeterカンドルの随伴群について新たな知見を得られた。とくに研究目的に挙げていた随伴群のコホモロジー環を有理数係数の場合に決定できた。またK(π,1)予想の研究についても進展があった。
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今後の研究の推進方策 |
本年度はホモロジー安定性については研究を進めなかった。Artin群のホモロジー安定性についてはRachael BoydによりArtinモノイドのホモロジー安定性が最近証明された。またRandal-WilliamsとWahlにより一般の群のホモロジー安定性に関して今までにない新たな枠組みが提案されている(いずれも本研究とは独立の結果)。研究計画を変更する必要はないが、これらの結果を取り入れた形でArtin群のホモロジー安定性の研究を推進したい。またスペクトル系列を用いたK(π,1)予想の研究を引き続き推進する。
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次年度使用額が生じた理由 |
予定していた研究連絡を相手方の都合により翌年度に延期になった。
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