研究課題/領域番号 |
17K05239
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
村上 斉 東北大学, 情報科学研究科, 教授 (70192771)
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研究分担者 |
藤 博之 香川大学, 教育学部, 准教授 (50391719)
樋上 和弘 九州大学, 数理学研究院, 准教授 (60262151)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 結び目 / Jones 多項式 / 体積予想 / Chern-Simons不変量 / 基本群の表現 / Reidemeister torsion |
研究実績の概要 |
結び目の色付きジョーンズ多項式のパラメータに exp(2πi/N) を代入し N を無限にしたときの漸近挙動が,結び目の補空間の双曲体積を定めるという予想を,R. Kashaev氏,村上順氏,研究代表者が提案した(体積予想).また,複素数 u を使ってパラメータを exp((2πi+u)/N) に変えたときも,体積の一般化ともいえる Chern--Simons 不変量(に加えて Reidemeister torsion も)が定まるであろうという予想を,研究代表者と S. Gukov氏が与えた.これらの予想に関して次ような研究を行なった. まず,米国テキサス大学・ダラス校のA. Tran氏と共同で,8の字結び目の色付きジョーンズ多項式の漸近挙動を調べた.我々が行なった研究は,パラメータが exp((2πi+u)/N) の場合である.ここで,u は実部が正で,虚部が負(もう少し制限がつく)であるような複素数である.虚部が0のときは,研究代表者がすでに研究を行なっており,その漸近挙動が,8の字結び目の(基本群の,あるSL(2;C) 表現に対応した)Chern-Simons不変量とReidemeister torsion を決定することが知られていた.本研究はこの結果を拡張したものである.その結果は,現在論文に取りまとめているところである.氏とは,8の字結び目のcable結び目の色付きジョーンズ多項式についても研究を進めているところである. また,共同研究者の藤氏,名古屋大学の岩木氏,東北大学の寺嶋氏とともに,Seifert 多様体に含まれる結び目の色付きジョーンズ多項式の漸近挙動を調べた.これについては,現在論文を執筆中である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
A. Tran氏や,藤氏たちとの共同研究はかなり順調に進んでいる.ただし,年度末にさらに一歩進んだ研究を行なう予定であったが,新型コロナウィルスの影響で取りやめになったため,研究に多少支障をきたした.
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今後の研究の推進方策 |
8の字結び目の色付きジョーンズ多項式の,パラメータexp((2πi+u)/N) に現れる u の範囲をもっと広げたい.これらは,8の字結び目の補空間の幾何構造と密接に関係することが予想されている.特に,u の絶対値が大きくなれば,対応する幾何構造が崩壊することが期待されるので,その様子を詳しく調べたい. 8の字結び目の色付きジョーンズ多項式に関するデータが集まれば,他の双曲結び目に関する研究への契機となるであろう. また,双曲結び目だけでなく,衛星結び目(cableなど)の色付きジョーンズ多項式についても引き続き調べていきたい.これらについては,予想もつかない段階であるので,野心的な研究となるであろう. 今後は,新型コロナウィルスによる生活の変貌も視野に入れて,webによる共同研究なども模索していきたい.
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウィルスにより,多くの出席予定の研究集会が中止・延期になったため.
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