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2019 年度 実施状況報告書

双曲構造の退化におけるライデマイスタートーションの漸近挙動の収束

研究課題

研究課題/領域番号 17K05240
研究機関秋田大学

研究代表者

山口 祥司  秋田大学, 教育文化学部, 准教授 (30534044)

研究期間 (年度) 2017-04-01 – 2021-03-31
キーワードザイフェルト多様体 / オービフォールド / ライデマイスタートーション / セルバーグ・ゼータ関数 / セルバーグ跡公式 / 力学系 / 測地線流
研究実績の概要

前年度に引き続き、三次元多様体に対してライデマイスタートーションと呼ばれる位相不変量と力学系が定めるゼータ関数との関係を考察した。前年度得られた結果には修正すべき点があったため必要箇所の修正を行い、考察結果を論文にまとめた。また日本数学会東北支部会で研究成果について研究発表を行なった。
前年度から錐特異点をもつ曲面上の単位接束とみなせる三次元多様体とその位相不変量であるライデマイスタートーションについて研究を進めており, ライデマイスタートーションを曲面の測地線流と呼ばれる力学系が定めるゼータ関数の値とみなせることを示すことができた。また測地線流の定めるゼータ関数の解析的性質を通して位相不変量であるライデマイスタートーションと曲面の面積といった解析的量の関係について考察した。
力学系が定めるゼータ関数は曲面のセルバーグ・ゼータ関数と関わりが深く、セルバーグ・ゼータ関数の積に分解できることが多い。今回の考察で扱った測地線流が定めるゼータ関数もセルバーグ・ゼータ関数の積で定まる因数分解をもつ。セルバーグ・ゼータ関数はセルバーグ跡公式(曲面の関数空間上の線形作用素のトレースを求める公式)から定まる関数等式をもち、セルバーグ・ゼータ関数の関数等式を測地線流が定めるゼータ関数の因数分解に適用することで測地線流が定めるゼータ関数の値を積分表示することができた。ゼータ関数の積分表示を詳しく調べることで、測地線流が定めるゼータ関数の値と曲面上の単位接束のライデマイスタートーションが一致することを示すことができた。
また曲面上の単位接束のライデマイスタートーションを測地線流の定めるゼータ関数の値とみなしゼータ関数の値の積分表示を利用することで、代表者が研究していたライデマイスタートーションの漸近挙動から錐特異点をもつ曲面の面積を導出できることも明らかにした。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

前年度と本年度の研究において、セルバーグ跡公式から導出されるセルバーグ・ゼータ関数の関数等式が重要な役割を果たしている。前年度の考察で用いたセルバーグ・ゼータ関数の関数等式は本研究課題の状況では調整が必要なことが判明した。
セルバーグ・ゼータ関数の満たす関数等式はセルバーグ跡公式から導出されるが、問題設定に応じてセルバーグ跡公式自体に調整が必要になる。本年度は適切なセルバーグ跡公式の適用を行い、本研究課題で必要とされるセルバーグ・ゼータ関数の関数等式の導出を行なった。また今年度得られたセルバーグ・ゼータ関数の関数等式を用いて前年度の測地線流の定めるゼータ関数の積分表示も適切に調整した。この調整によって本研究課題で得られていた研究成果をより簡潔にまとめることができたが、前年度の考察の修正は当初の研究計画では予定していなかったので進展がやや遅れていると判断した。

今後の研究の推進方策

三次元多様体の幾何構造は大きく双曲構造とザイフェルト構造に分けることができる。三次元双曲多様体に対してライデマイスタートーションがゼータ関数の値とみなせることを明らかにした先行研究が存在している。本研究課題のこれまでの成果によりザイフェルト多様体についてもライデマイスタートーションはゼータ関数の値とみなせることが明らかになった。また代表者の研究も含む一連の先行研究から三次元双曲多様体とザイフェルト多様体ではライデマイスタートーションの漸近挙動の様子が異なることも示されている。本研究課題ではライデマイスタートーションの漸近挙動の違いをゼータ関数を通じてより詳しく比較することに取り組む。三次元双曲多様体の双曲構造を変形するとザイフェルト多様体の一部とみなせるようになる場合がある。今後は双曲構造の変化がゼータ関数の値とライデマイスタートーションの漸近挙動に与える影響を調べるため、三次元双曲多様体の四面体分割を用いた双曲構造の記述などを通じて双曲構造の変化と測地線流の定めるゼータ関数の値との関係を考察する。
四面体分割を用いた双曲構造の記述や測地線流の定めるゼータ関数といった力学系のゼータ関数については国内・国外ともに多くの研究が行われている。三次元双曲幾何学および力学系のゼータ関数について専門家との意見交換を行いつつ考察を進めていく。

次年度使用額が生じた理由

新型コロナウィルスによる影響で参加予定の研究集会や学会が中止されたため予定していた旅費の使用を中止した。使用を中止した旅費は次年度の旅費として利用することを計画しているが、新型コロナウィルスによる影響が長引くようであればリモートワークやリモート開催される学会に対応するための備品(PC等)の整備に充てる。

  • 研究成果

    (2件)

すべて 2020 その他

すべて 学会発表 (1件) (うち招待講演 1件) 備考 (1件)

  • [学会発表] Dynamical zeta functions for geodesic flows and the higher-dimensional Reidemeister torsion for Fuchsian groups2020

    • 著者名/発表者名
      山口 祥司
    • 学会等名
      日本数学会東北支部会(特別講演)
    • 招待講演
  • [備考] Yoshikazu YAMAGUCHI's web site

    • URL

      http://www.gipc.akita-u.ac.jp/~shouji/index_ja.html

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公開日: 2021-01-27  

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