本研究は,新型コロナウイルス感染症の感染拡大の影響により研究の進捗が遅れ,最終年度を2020年度へと延長した.最終年度においては,当初に設定した「指数定理の導出」および「具体例への適用」という目的を完遂した.最終年度に実施した研究の成果及び研究期間全体を通じて実施した研究の成果は以下のとおりである. 研究期間全体を通じて掲げた「指数定理を離散化する」という方針のもとに,最終年度においては:1)Ginsparg-Wilson 指数が関与する指数定理(夏目利一との共同研究);2)多面体に対する Gauss-Bonnet 定理と Alexander-Spanier コホモロジーに関する研究;3)等質中心アファイン平面曲線のなす空間の研究(黒瀬俊および藤岡敦との共同研究)を推進した. 1)では,ランダムウォークの一般化と考えられる量子ウォークを用いて,Ginsparg-Wilson 指数が関与する具体例を見出した.各有理整数に2次行列環を対応させるという状況下で定まる量子ウォークにおいて,離散的なフレドホルム作用素が定義される.一方,適切な設定の下にC*環を構成すると,この作用素に対する Ginsparg-Wilson 指数を考えることができる.このとき,フレドホルム指数が Ginsparg-Wilson 指数と一致することが確認された. 2)では, Alexander-Spanier コホモロジーを用いて,閉多様体の写像度集合の性質に関する応用例を見出した. 3)では,等質中心アファイン曲線のなす空間に対する考察をさらに深め,等質中心とは限らない種々のアファイン曲線のなす空間を導入し,これらの空間上にシンプレクティック作用を構成した.これらの作用に関しても,単位円周の微分同相群から得られる Bott-Virasoro群との関連性について,一定の成果を得た.
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