研究課題/領域番号 |
17K05248
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
岸本 大祐 京都大学, 理学研究科, 准教授 (60402765)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 座標空間配置 / polyhedral product / モーメント・アングル複体 / Davis-Januszkiewicz空間 / ホモトピー論 / トーリックトポロジー |
研究実績の概要 |
(1)一般に、群の共役で不変な部分集合はquandleとみなせる。Coxeter群の生成元の共役のことを鏡映と呼ぶ。鏡映全体の部分集合は共役で不変な部分集合となるので、quandleとみなせ、これをCoxeter quandleという。一般に、、quandleからは随伴群と呼ばれる群が構成されるので、Coxeter quandleの随伴群という新しい群を得る。Artin群からCoxeter群への自然な射影は対応するCoxeter quandleの随伴群を、全射により経由することがわかる。また、Coxeter quandぇの随伴群の基本的な構造が最近、秋田利之氏(北海道大学)により明らかにされた。right-angledなArtin群とCoxeter群はZとZ/2のグラフ積なので、その分類空間は座標空間配置で表される。したがって、right-angled Coxeter quandleの分類空間は座標空間配置、もしくは、より一般のpolyhedral productで表されるかどうかが問題となる。秋田氏の結果を用いることにより、right-angled Coxeter quandleの分類空間が閉Mobiusの帯とその境界である円周の組に対応するpolyhedral productで与えられることを示した。その結果はarXivに投稿した。(arXiv:1706.06209)
(2)Aberdeen大学からRan Levi教授を招聘し、座標空間配置と高次極限との関係に関する共同研究をスタートさせた。
(3)Levi氏はニューロ・トポロジーと呼ばれる神経科学へのトポロジーの応用に関する第一人者でもあり、ニューロンの座標空間配置によるモデルに興味をもっており、それに関する議論を通して、単体複体より一般のポセット上の座標空間配置の構成に関する研究を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
(1)これまで行ってきたpolyhedral productに関する研究の論文がすべて出版予定となり、研究の価値が認められている。これにより、今後の研究をスムーズに行うことができる。特に、ファット・ウェッジ・フィルトレーションに関する基礎理論が評価され、その応用として得られた結果はトポロジーだけでなく、組合せ論の研究者にもインパクトを与え、組み合わせ論的に一般化されている。
(2)Coxeter quandleと座標空間配置の関係という新しい方向性を開始し、その基礎的な構造に関する論文を完成させせることができた。この結果は研究集会や国際会議等で発表しており、その際に、今後の研究に必要な情報も収集できた。また、この研究はCoxeter群とArtin群のトポロジーに関する研究の新しい手法を提供すると期待される。
(3)座標空間配置のコホモロジーは、座標空間配置をつくるときに用いる空間のせる構造を用いるなど、非常に初等的な方法でのみ計算されており、一般には決定されていない。特に、上記のベースとなる空間のコホモロジーとの関係は不明のままである。今、座標空間配置はホモトピー余極限のホモトピー型をもつので、そのコホモロジーはBousfield-Kanスペクトル系列により計算することが可能であり、その計算は高次極限の計算に他ならない。そこで、座標空間配置、もしくは、より一般のある種のポセット上の空間のホモトピー余極限の高次極限に関する研究を、Aberdeen大学のRan Levi氏とスタートさせた。基礎的なアイデアはすでに得ており、あとは、それらをまとめる段階にさしかかっている。この研究はこれまでの未解決問題の解決とともに、高次極限の消滅に関する純粋にホモトピー論的な新しい結果を含むものである。
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今後の研究の推進方策 |
(1)座標空間配置とその補空間を表すpolyhedral productはある種のBorel構成により結び付けられており、これらの間に自然な写像が存在する。これまで、座標空間配置やその補空間に関する研究は行われてきたが、この写像に関する研究はほとんどなされていない。そこで、ファット・ウェッジ・フィルトレーションの理論を応用し、特殊な単体複体の場合にこの写像をホモトピー論的に記述する研究をスタートさせる。これはWhitehead積の組み合わせ的拡張に関する研究としてもとらえることができる。 (2)right-angled Coxeter quandleの分類空間と座標空間配置に関する研究を継続する。具体的には、right-angled Coxeter quandleとright-angled Artin群、Coxeter群のcomensurabilityなどの群論的な関係を座標空間配置やpolyhedral productを用いて証明、記述する。また、ホモロジー安定性などに関しても研究し、Artin群のホモロジーへと応用する。 (3)座標空間配置のコホモロジーと高次極限の消滅に関するLevi氏との共同研究を完成させる。ここでは、どの程度一般的な状況で消滅定理が成り立つかを見極めることが重要であり、一般的であればあるほど今後の応用範囲が広がる。これによりグラフ積のコホモロジーなど、重要な計算を具体的に行うことが可能になる。 (4)Levi氏との新しい共同研究として、より一般のposetによる座標空間配置のトポロジーの研究をスタートさせる。これはニューロ・トポロジーに動機をもつまったく新しい研究である。まずはそのコホモロジーを(3)で得られた結果を用いて決定することから始め、さらに、補空間のトポロジーなどの研究へと繋げる。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成30年度に国際会議「Mapping Spaces in Algebraic Topology」を主催することとなり、そこで支給する旅費が必要となったため。
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