研究実績の概要 |
曲面Σの基本群πからリー群Gへの表現全体の空間Hom(π,G)には群Gが共役により作用する。この作用による幾何学的不変式論の意味での商空間Xを指標多様体という。この指標多様体を、表現の像が離散群になる部分とそうでない部分に分割すると、前者はΣのG構造の変形の空間とみなすことができる。特にGがSL(2,C)の場合は双曲幾何構造の変形空間であり、重要な研究対象である。また、指標多様体には曲面Σの写像類群が自然に作用し、この作用の複雑さによっても指標多様体は2つに分割される。これら2つの関係は未解明な部分が多い。 上記のSL(2, C)の離散部分群はクライン群と呼ばれる。平成30年度においては、SL(2, C)の要素であって放物型と呼ばれるもの2つによって生成される群をランダムに発生させた場合に、それがどのような確率でクライン群になるか、という問題の研究を行った。まず、放物型のSL(2, C)の要素全体の空間はコンパクトな空間ではないので、そこに幾何学的に意味のある確率密度関数を与えることが問題になるが、これについては先行研究があり、これを採用することにした。すると残りの問題は離散性の判定となるが、特別なSL(2, R)の場合には理論的なアプローチを、より一般のSL(2, C)の場合には計算機実験によるアプローチを行い、それぞれの場合においての確率の評価を得ることに成功した。特に後者の場合においては、本研究代表者が行ってきた離散性判定に関するアルゴリズムを効果的に利用することに成功した。
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