研究実績の概要 |
コンツェビッチの配置空間積分は、3次元多様体とその上の局所系の対に対する不変量を与える。3次元多様体が3次元球面とホモロジー同型である3次元多様体の場合は、1点の補空間上の自明局所系に対するコンツェビッチの不変量が大槻氏の有限型不変量(独立なものが大量に存在する)の大半を含むことが、クーパーバーグ・サーストン, レスコップ達により、葉廣氏のクラスパー手術を用いて示されており、非自明な局所系に対しても同様の方法で多くの情報が取り出せる可能性があった。また、コンツェビッチは配置空間積分を用いて4次元以上のホモロジー円板をファイバーとするファイバー束の不変量も構成していた。本研究では、これらの不変量の構成方法をより一般に発展させると同時に、それらの位相幾何学への応用を模索することを目指した。主要な成果は以下である。
1.コンツェビッチの配置空間積分を用いて、4次元円板の相対微分同相の群Diff(D^4,∂)が可縮でないことを示した。これはスメール予想の4次元版に対する否定的解決を与える。 2.コンツェビッチの配置空間積分を、ある種の4次元多様体上の非自明な局所系に対して拡張した。それを用いてそれらの4次元多様体の写像類群(微分同相写像のアイソトピー類からなる群)の非自明な元を多数見つけた。特に、D^3 x S^1の写像類群が無限生成であるというバドニー・ガバイの結果の別証明を与えた。
当初は主に3次元多様体の有限型不変量の研究を行う予定であったが、無限基本群の場合の計算における困難に直面したことと、高次元における発展可能性が見えたことにより、軌道修正を行った。しかし、上記2を進める中で、有限基本群の3次元多様体の場合でも多くの情報が失われずに取り出せる可能性があることがわかってきた。現在、その方向で、研究協力者の協力に基づいて結果をまとめているところである。
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