• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2017 年度 実施状況報告書

3次元多様体のシャドウ複雑度と幾何構造に関する研究

研究課題

研究課題/領域番号 17K05254
研究機関広島大学

研究代表者

古宇田 悠哉  広島大学, 理学研究科, 准教授 (20525167)

研究期間 (年度) 2017-04-01 – 2020-03-31
キーワード3 次元多様体 / 4 次元多様体 / シャドウ / 国際情報交換 イタリア
研究実績の概要

可微分 4 次元多様体のシャドウとは,大雑把に述べるとその多様体の局所平坦な 2-骨格のことをさす.シャドウの閉近傍の境界は 3 次元多様体となるため,シャドウにより可微分 3 次元多様体,4 次元多様体双方を組合せ的に表示することができる.シャドウにより記述される多様体の構造は,とりわけ 3 次元双曲幾何学と相性が良いことが特徴的である.各 3 次元多様体,4 次元多様体が許容するシャドウの最小頂点数をその多様体のシャドウ複雑度とよぶ.シャドウ複雑度は絡み目や空間グラフに対しても定義される.
本研究では,シャドウ複雑度が小さい 3 次元多様体,4 次元多様体の分類とその性質の考察を行うことを目標にしている.本年度は,Bruno Martelli 氏,直江央寛氏との共同研究において,シャドウ複雑度が 1 以下である可微分閉 4 次元多様体の完全な特徴づけを行った.特に,このクラスの多様体は,シャドウの特異集合の近傍の構造から自然に構成される 19 個のコンパクト 4 次元多様体,および 3 次元実射影空間と円周との直積という「例外的」な 4 次元多様体によって「生成」されるグラフ多様体(と有限個の複素射影平面を連結和したもの)であることが分かった.証明には,シャドウの局所変形に関する非常に技術的で精密な考察に加え,シャドウの構造から自然に得られる双曲多様体に対する例外的 Dehn 充填の分類という「3 次元トポロジーの問題」が自然に表れ,これらを解決することで上記結果を得ることに成功した.この他,Sangbum Cho 氏と共同で Goeritz 群の結び目理論への応用に関する研究,船吉健太氏と共同で 3 次元球面に拡張可能閉曲面の自己同相写像の研究を行った.得られた結果は全て arXiv で公開し,定期刊行専門誌に投稿中である.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

シャドウ複雑度が 1 以下の閉 4 次元多様体のクラスについて,ほぼ満足のいく形で全貌が解明できた.特に,シャドウ複雑度が 0 のクラスと同様,このクラスもコンパクト 4 次元多様体のダブル(の複素射影平面との連結和)によって占められていることが判明した.ただし,シャドウ複雑度が 0 のクラスにおいては,ダブルをとる 4 次元多様体は 2 ハンドル体に限られていたのに対し,シャドウ複雑度が 1 のクラスはより多くのダブルを含んでいることも分かった.帰結として,このクラスには,まだ aspherical な多様体や,非自明な E8 因子を含む偶の交叉形式を持つ多様体は含まれていないことが分った.また,単連結な多様体も自明な例(4 次元球面,複素射影平面,2 つの複素射影直線の直積など)を除いてみつかっていない.これらの多様体がシャドウ複雑度を上げていく過程でいつ現れるのかという問いは今後の課題としたい.

今後の研究の推進方策

「現在までの進捗状況」で述べたように,研究はおおむね順調に進んでいる.今後,閉 4 次元多様体に関する研究でははまず aspherical な多様体,非自明な E8 の因子を含む偶の交叉形式を持つ多様体の持つシャドウ複雑度について,考察を進めていきたい.とりわけ,K3 曲面のシャドウ複雑度は 14 以下であることが知られているが,この多様体のシャドウについては,ほとんど何も知られていない.例を深く観察することから研究を進めていきたい.また,シャドウ複雑度が 1 の S^3 内の双曲絡み目,および分岐シャドウ複雑度が 2 であるが安定写像の特異ファイバーの数が 1 本である S^3 内の双曲結び目(いわば分岐シャドウ複雑度が 1+1/2 のクラス)の特徴付けについても,上記研究の手法とシャドウ絡み目の S^3 への埋め込みの考察を行うことで実行してく予定である.

次年度使用額が生じた理由

計算機の購入を考えていたが,価格が想定していたよりも上がっていたことと,研究が初期段階において順調に進行し,まずは結果の公表のために経費を費やした方がよいと判断したため,購入を見送った.次年度は残額と新たな交付金を合わせて計算機を購入し,研究に活用していく予定である.

  • 研究成果

    (9件)

すべて 2019 2018 2017 その他

すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 3件、 査読あり 3件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 2件、 招待講演 3件) 備考 (1件)

  • [国際共同研究] Hanyang University/KIAS(韓国)

    • 国名
      韓国
    • 外国機関名
      Hanyang University/KIAS
  • [国際共同研究] University of Pisa(イタリア)

    • 国名
      イタリア
    • 外国機関名
      University of Pisa
  • [雑誌論文] The mapping class groups of reducible Heegaard splittings of genus two2019

    • 著者名/発表者名
      Sangbum Cho, Yuya Koda
    • 雑誌名

      Transactions of the American Mathematical Society

      巻: 371 ページ: 2473-2502

    • DOI

      10.1090/tran/7375

    • 査読あり / 国際共著
  • [雑誌論文] The disk complex and 2-bridge knots2018

    • 著者名/発表者名
      Sangbum Cho, Yuya Koda
    • 雑誌名

      Journal of Knot Theory and its Ramifications

      巻: 27 ページ: 12pp

    • DOI

      10.1142/S021821651850027X

    • 査読あり / 国際共著
  • [雑誌論文] Haken spheres for genus two Heegaard splittings2018

    • 著者名/発表者名
      Sangbum Cho, Yuya Koda
    • 雑誌名

      Mathematical Proceedings of the Cambridge Philosophical Society

      巻: 165 ページ: 563-572

    • DOI

      10.1017/S0305004117000718

    • 査読あり / 国際共著
  • [学会発表] Extending automorphisms of the genus-2 surface over the 3-sphere2018

    • 著者名/発表者名
      Yuya Koda
    • 学会等名
      Topology Seminar at Chung-Ang University
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] The disk complex and 2-bridge knots2017

    • 著者名/発表者名
      古宇田悠哉
    • 学会等名
      研究集会「Graphと3次元多様体の研究」
    • 招待講演
  • [学会発表] The mapping class groups of Heegaard splittings for 3-manifolds2017

    • 著者名/発表者名
      Yuya Koda
    • 学会等名
      Capital Normal University-Hiroshima University Joint conference on Mathematics
    • 国際学会 / 招待講演
  • [備考]

    • URL

      http://home.hiroshima-u.ac.jp/ykoda/

URL: 

公開日: 2018-12-17  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi