研究実績の概要 |
可微分 4 次元多様体のシャドウとは, 大雑把に述べるとその多様体の局所平坦な 2-骨格のことをさす. 4 次元多様体が許容するシャドウの最小頂点数をその多様体のシャドウ複雑度とよぶ. 本年度は, シャドウ複雑度が 2 以下である非輪状 4 次元多様体で境界が 3 次元球面であるものは標準的な 4 次元球体と微分同相であることを証明した論文を直江央寛氏と共同で執筆し, Algebraic & Geometric Topology から受理された. また, 古谷凌雅氏と共同でシャドウ複雑度が 1 の S^3 内の双曲絡み目,および分岐シャドウ複雑度が 2 であるが安定写像の特異ファイバーの数が 1 本である双曲結び目(いわば分岐シャドウ複雑度が1+1/2 のクラス)の完全な特徴付けに成功した. さらに, 石井一平氏, 石川昌治氏, 直江央寛氏と共同でシャドウの類似物である 3 次元多様体のスパインに関する研究を進め, 正フロースパインと接触構造に関する論文を執筆して arXiv で公開し, 定期刊行専門誌に投稿中である. この他, 石原海氏, 小沢誠氏, 下川航也氏と共同で執筆した多重分岐曲面の近傍同値に関する論文を Topology and its Applications から, 船吉健太氏と共同で執筆した曲面の同相写像の 3 次元球面への拡張可能性に関する論文を The Quarterly Journal of Mathematics から, Sangbum Cho 氏と Jung Hoon Lee 氏と共同で執筆した 3 次元球面の Heegaard 分解に付随する原始円盤複体に関する論文を Topology and its Applications から, 井口大幹氏と共同で執筆した Heegaard 分解の写像類群に関する論文を Topology and its Applications からそれぞれ出版した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
シャドウ複雑度が 2 以下の非輪状 4 次元多様体について, 期待通りの結果を論文にまとめ査読付き定期刊行専門誌から受理された. また, シャドウ複雑度が 1 の双曲絡み目,および分岐シャドウ複雑度が 2 であるが安定写像の特異ファイバーの数が 1 本である双曲結び目の完全な特徴付けに成功した. さらに, シャドウの類似物である 3 次元多様体のスパインついて, 接触構造との新たな対応を見出すことができた. 複雑度が高い 4 次元多様体, 3 次元接触構造に対するさらなる考察については今後の課題としたい.
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウィルス感染症による影響により, 本研究課題に関係する研究集会と研究会(各1件)に参加し, 最新の成 果を収集するとともに, 同研究集会, 研究会に参加予定であった研究協力者と研究打ち合わせを行うという当初の予定 を見送ることとなった. こららの事情により, 当初の研究計画の見直しが必要となったため, 補助事業期間を延長することになった. 今年度事態が落ち着いたのちに, 打ち合わせのために使用することを計画している.
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