研究課題/領域番号 |
17K05259
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研究機関 | 大阪市立大学 |
研究代表者 |
金信 泰造 大阪市立大学, 大学院理学研究科, 特任教授 (00152819)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 結び目 / リボン結び目 / 結び目群 / ねじれAlexander多項式 |
研究実績の概要 |
4次元球面内の2次元球面の埋め込みである2次元結び目の特殊なクラスである2次元リボン結び目,とくに,フュージョン数が1の2次元リボン結び目の分類の研究をおこなった.高橋功多の大阪市立大学大学院修士論文において,このクラスの中で,2組の同型な結び目群をもつ2次元リボン結び目を発見している.これらは,Alexander多項式やSL(2,C)表現に関するねじれAlexander多項式では分類不可能であったが,4次元球面の3重巡回分岐被覆空間の基本群,または,結び目群からSL(2,C)への表現から定義されるトレース集合とよばれる不変量により分類することができた.
2020年度では,これら2組の2次元リボン結び目を一般化して,同型な結び目群をもつ2個のフュージョン数1の2次元リボン結び目からなる無限列を発見し,その分類を試みたが無限個の組の分類には至らなかった.2021年度は,この無限列を含む,さらに一般化した同型な結び目群をもつ2個のフュージョン数1の2次元リボン結び目からなる無限列を構成した.そして,その分類の研究をおこなった.その結果,全部の分類までには至らなかったが,ある部分無限列を分類することに成功した.方法は,結び目群からSL(2,C)への標準的な表現が異なることを示すことで2個の結び目を区別した.技巧的な計算が必要で,この部分は研究協力者の角俊雄との共同研究による.
これとは別に,対称和で表される1次元リボン結び目の対称和図式に関する結果を得た.すなわち,Lammが与えた対称和図式の無限列の1つを調査して,その無限列に含まれる対称同値でない同型なリボン結び目の組からなる2種類の無限列を発見した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
当研究の当初の研究課題は結び目,絡み目の局所変形であった.具体的には以下の3種類の局所変形の研究である.(1)整合的バンド手術.(2)結び目の非整合的バンド手術であるH(2)移動.(3)交差交換.
また,昨年の『今後の推進方策』で,以上の研究とともに,2019年度にはじめた2次元リボン結び目の分類問題や2次元リボン結び目のねじれAlexander多項式の研究, 2020年度にはじめた1次元リボン結び目の多項式不変量による分類問題の研究.また,空間グラフの位相不変量の研究をあげた.
上記の『研究実績の概要』で述べたように,2021年度は2次元リボン結び目の分類問題に関して結果を得たが,それ以外の予定した課題については,特段の成果はあがらなかった.
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今後の研究の推進方策 |
2021年度までにおこなう予定であった部分について再度研究を進めていくことにしたい.10交点までの結び目に関して,素な結び目についてH(2)結び目解消数を求めたが,合成結び目についてもH(2)結び目解消数を求めることにより,10交点までの結び目のH(2)結び目解消数の表を作成して論文として発表したい.10交点までの結び目に対して,Darcy(1997年),Moon(2010年)が結び目の交差交換距離の表を発表しているが,この表の改良を試みたい.すなわち,Darcy,Moon以降に,Alexander多項式,あるいは,その他の多項式不変量の特殊値を用いた交差交換距離の下からの評価が,いくつか開発されているが,それらを適用することにより,この表を見直していきたいと考える.さらに,高分子のトポロジーへの応用が期待される空間グラフの位相不変量,とくに,多項式不変量について,あらたに研究を開始したいと考えている.また,新たな局所変形として4移動についても研究を開始したいと考えている.
バンド手術と関連して,2019年度からはじめた2次元リボン結び目の分類問題や2次元リボン結び目のねじれAlexander多項式の研究,2020年度にはじめた1次元リボン結び目の多項式不変量による分類問題の研究も進めたい.
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルスのため研究集会の多くが遠隔開催となった.2022年度は,研究協力者,関連する研究をおこなっている大学院生も含め,可能な限り研究会等に出席する予定である.また,コンピュータ等の情報機器の整備もおこないたいと考えているので,その費用が必要となる.
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