今年度は以下の二つの話題について考察を行った。 (1)2次元軌道体群の円周への作用に付随する懸垂束を用いた作用の剛性の研究(足立真訓氏・野澤啓氏との共同研究):今年度の研究では、これまでに閉曲面とは限らない曲面群の作用に関する研究の一般化として、閉とは限らない2次元軌道体の円周への作用に付随する懸垂束の平坦接続を葉層調和測度で平均化して得られる主接続に関して、曲率評価とGauss-Bonnet型公式について考察した。さらに、その帰結として期待されるMilnor-Woodの不等式の精密化や松元・Burger-Iozzi-Wienhardの剛性定理の別証明についても考察した。 (2)巡回群の自由積の円周への作用の剛性と柔軟性について:これまでに引き続き、モジュラー群PSL(2;Z) に関する結果の一般化を目指して2つの有限巡回群の自由積を中心に考察した。特に、フックス作用の持ち上げがいつ剛性を持つかについての考察を引き続き行った。ジェンキンスとノイマンによる円周の同相写像の回転数に関する結果を用いて得られていた、フックス作用の持ち上げのうち剛性を持つものの候補たちについて、作用に付随するマルコフ分割の構成について引き続き考察した。 研究期間全体を通じた研究の成果としては、曲面群の円周への作用に付随する懸垂束を用いた作用の剛性の研究(足立真訓氏・野澤啓氏との共同研究)が挙げられる。この研究では、閉曲面とは限らない曲面の基本群の円周への作用に付随する懸垂束の平坦接続を葉層調和測度で平均化して得られる主接続について、曲率評価とGauss-Bonnet型公式を得た。その帰結として、閉曲面とは限らない曲面の基本群群の円周への作用の有界オイラー数に関して知られていた松元・Burger-Iozzi-Wienhardの剛性定理の別証明を与えた。
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