研究課題/領域番号 |
17K05261
|
研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
森藤 孝之 慶應義塾大学, 経済学部(日吉), 教授 (90334466)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
|
キーワード | 絡み目群 / 双曲絡み目 / 双曲的トーション多項式 / DFJ予想 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は,双曲絡み目群のホロノミー表現に付随して定まる双曲的トーション多項式の基本的性質を明らかにし,そこから得られる代数的性質を用いて,絡み目の幾何学的性質を特徴付ける枠組みを与えることである. より具体的には,双曲結び目のファイバー性と種数に関するDunfield-Friedl-Jacskson予想(DFJ予想)を双曲絡み目に拡張し,絡み目群のSL(2,C)-指標代数多様体の適当なスライス(ホロノミー表現のリフトを含む断面)の情報から,絡み目のファイバー性とサーストンノルムを決定することを目標とする.大別すると,次の2点 1.双曲絡み目に対する双曲的トーション多項式の明示公式 2.得られた多項式の性質と双曲絡み目のファイバー性およびサーストンノルムとの関係 を明らかにすることが目標となる. 上述の研究目標に対して,今年度は主として1.に焦点を絞って研究を行った.より具体的には,DFJ予想を3次元球面内の絡み目の場合に拡張して厳密に定式化し,特に,双曲的2橋絡み目と呼ばれる広範な絡み目のクラスのある無限系列に対して,一般化されたDFJ予想が正しいことを証明した.また,奈良女子大学での国際研究集会,ならびに,フランス・マルセイユのCIRMにおける国際研究集会をそれぞれ10月と1月に主催し,本研究課題に近い領域を専門とする研究者をフランス人を中心に招聘した.そこで行なった活発な議論が,上記研究成果を得るための強力な推進力となった.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の重要な第一ステップであるDFJ予想の一般化が,数学的に厳密な形で定式化できたため.また,一般化された予想をサポートする豊富な例を発見することができたので,今後の研究を推進する上で良い指針を与えると考えられるため.
|
今後の研究の推進方策 |
平成29年度に得られた結果を基にして,次年度は「9.研究実績の概要」欄で述べた2つの目標のうち,1.と2.の橋渡しに係る部分に焦点を絞って研究を行うことにする.より具体的には,双曲的2橋絡み目のSL(2,C)-離散忠実表現を含むパラボリック表現による指標代数多様体のスライスの考察を行なう。特に,ファイバー性とサーストンノルムに関する幾何学的情報がどのような仕組みで抽出できるかを解明し,小さい絡み目と呼ばれる,より広範な絡み目のクラスの研究へと発展させることが課題となる.
|
次年度使用額が生じた理由 |
当該年度の研究を推進する過程で当初計画よりも早く理論的側面が進展していたため,計算機と数式処理ソフトを使用した計算機実験を行なうに至らず,これらの物品購入を先送りしたため. 次年度の早い段階でこれらの物品を購入して計算機実験を行なうことで,本研究課題の推進に役立てたい.
|