研究課題/領域番号 |
17K05261
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
森藤 孝之 慶應義塾大学, 経済学部(日吉), 教授 (90334466)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 結び目群 / 双曲結び目 / 双曲的トーション多項式 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、双曲絡み目のホロノミー表現に付随して定まる双曲的トーション多項式(SL(2,C)-表現に付随したねじれAlexander多項式)の基本的性質を明らかにし、そこから得られる代数的性質を用いて、絡み目の幾何学的性質を特徴づける枠組みを与えることである。 この研究目標に対して今年度は、絡み目の持つ対称性と双曲構造の変形の観点から、SL(2,C)の高次元既約表現に対する双曲的トーション多項式の持つ代数的性質について、詳細な考察を行った。より具体的には、(完備とは限らない)双曲構造を持つ結び目Kに対して、Kの鏡像K*の双曲的トーション多項式と、Kの双曲的トーション多項式の関係を記述する等式の導出に成功した。これを用いることで、双曲結び目Kがもろて型である(KとK*が等しくなる)必要条件を、双曲的トーション多項式の言葉で明確に記述することができた。さらに、ツイスト結び目と呼ばれる双曲結び目の無限系列に対して、この必要条件が、十分条件になっていることも示すことができた。この成果は、東京農工大学の合田洋教授との共同研究に基づいている。 一方、昨年度はCOVID-19の影響により、開催を断念せざるを得なかった国際研究集会「Topology and Geometry of Low-dimensional Manifolds」を、海外からの講演者も招待してオンライン開催した。日本国内だけでなく、フランス、スペイン、ドイツ、ベルギーからの参加もあり、最新の研究成果についての報告を聞くとともに、本分野における今後の問題意識の共有を図ることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
COVID-19の影響により、今年度全般に渡って研究計画(特に、外国人共同研究者との対面での研究打ち合わせ等)を変更せざるを得なかったため。
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今後の研究の推進方策 |
本研究計画を再延長し、最終年度となる令和4年度は、昨年度に得られた研究成果を基にして、「研究実績の概要」欄で述べた研究目標の達成を目指す。特に、高次元表現に対する双曲的トーション多項式の考察から新しい知見が得られたので、対称性、表現の変形、高次元化の各観点からの研究を行うとともに、相補的な視点からの研究も推進する。また、COVID-19の影響が見通せない状況ではあるが、可能な範囲で国際研究交流を進め、本研究課題へのフィードバックを与えることを目標とする。
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次年度使用額が生じた理由 |
COVID-19の影響により、対面開催を予定していた国際研究集会をオンライン開催に切り替えたこと、さらに、参加を予定していた多くの研究集会が中止、もしくは、オンライン開催となったため、旅費の支出が当初計画よりも大幅に少なくなったことに起因して、次年度使用額が生じた。 次年度は、オンライン開催される研究集会で使用する機器の充実を図り、研究成果を広く発信する計画である。また、社会情勢を見ながら可能な限り国内外の専門家を訪問して、本研究課題で得られた成果のレビューを受ける予定である。
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