研究実績の概要 |
本研究の目的は、双曲絡み目のホロノミー表現に付随して定まる双曲的トーション多項式(SL(2,C)-表現に付随したねじれAlexander多項式)の基本的性質を明らかにし、そこから得られる代数的性質を用いて、絡み目の幾何学的性質を特徴付ける枠組みを与えることである。 この目標に対して、昨年度までに以下の成果を得た:(1) DFJ予想を3次元球面内の絡み目の場合に拡張して厳密に定式化し、特に、双曲的2橋絡み目の無限系列に対して、一般化された予想を証明した。(2) さらに広範な絡み目のクラスに対して予想を証明するために、その足掛かりとして、結び目の範疇でもDFJ予想が示されていなかった3橋結び目の無限系列に対して、DFJ予想を証明した。(3) 双曲絡み目の持つ性質と対比させるために、双曲構造を許容しないトーラス絡み目に対して、そのねじれAlexander多項式が、SL(2,C)-指標代数多様体上の局所定数関数であることを示した。 本研究課題の最終年度である今年度は、8の字結び目や三葉結び目補空間を含む3次元多様体の無限系列に対して、それらの基本群の既約表現の1-パラメータ族(Mangum-Shanahan表現)に付随したねじれAlexander多項式の明示公式を与えた。より具体的には、1点穴あきトーラスをファイバーとする円周上の曲面束のうち、トンネル数が1であるクラスに対して、MangumとShanahanによって導入されたSL(3,C)-既約表現に付随したねじれAlexander多項式、および、その特殊値として得られるReidemeisterトーションの明示公式を与えた。 以上の成果は、米国テキサス大学・ダラス校のAnh T. Tran准教授、ならびに、創価大学の北野晃朗教授との共同研究に基づいている。
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