研究課題/領域番号 |
17K05265
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研究機関 | 大阪電気通信大学 |
研究代表者 |
中村 拓司 大阪電気通信大学, 工学部, 教授 (60382024)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 結び目 / 局所変形 / Alexander多項式 / Conway多項式 / Jones多項式 / 仮想結び目 / 溶接結び目 / ねじれ多項式 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は局所変形を通して結び目の幾何的性質と多項式不変量の関係を明らかにすることである.特に局所変形1回で解ける結び目の多項式不変量の実現問題の解決・特徴付けを行ない,その局所変形が与える結び目の幾何的・代数的性質の関連性を明らかにする.また,多項式不変量を常に一定に変化させる局所変形の開発を行ない,この局所変形を通して,結び目の幾何的・代数的性質の関連性を明らかにし,結び目理論に新しい展開を与えることも目的の一つである. 本年度は昨年度に引き続き,まず通常の結び目を真に含む一般化である溶接結び目に対して,そのパス変形による幾何的・代数的性質の変化などを研究した.昨年度に,佐藤進氏,中西康剛氏,安原晃氏との共同研究においてパス変形1回でほどける溶接結び目での Conway多項式の実現問題に取り組み,通常の結び目図式を持つような溶接結び目に対して,実際,Conway多項式の2次の係数を1,他の係数は任意に選んだときにそれを実現するパス変形1回でほどけるものを構成した.今年度はこれを一般化し,任意の奇数をConway多項式の2次の係数に持つ溶接結び目で,パス変形1回でほどけるものを構成した.ただし,4次以上の係数は任意には選べない.この成果は現在,論文にまとめている. また,佐藤進氏,中西康剛氏との共同研究において,仮想結び目に対するねじれ多項式と局所変形の研究を行なった.仮想結び目のねじれ多項式を変えない局所変形としてshell moveを導入し,2つの仮想結び目に対し,ねじれ多項式が一致することとshell moveで移り合うことが同値であることを示した.また,この結果を2成分の仮想絡み目に拡張した.この成果は現在,論文にまとめ投稿中である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
結び目のいくつかの局所変形について,同時並行で研究を進めているが,本年度は溶接結び目に対するパス変形とConway多項式の実現に関して新たな知見を得たため.ここから通常の結び目での当該研究計画にもフィードバックが得られると考えている. 仮想結び目の局所変形に対し,当初計画にはない視点からの成果が得られており,この視点も当該研究計画に応用できると考えている.
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今後の研究の推進方策 |
本年度の研究の進捗状況を踏まえて、今後の研究の方針を次のように考えている。 (1)通常の結び目について,パス変形に関するConway多項式の実現問題について研究する.本年度の研究で,溶接結び目に関しては新たな展開が得られたので,それを通常の結び目について応用させる. (2)任意に3つ組が与えられたときに,それらを移しあう局所変形の開発を行ないたい.障害ある場合はそれをJones多項式やAlexander多項式などの不変量でその障害を記述する. (3)仮想結び目に対し,通常の結び目への局所変形とは本質的に異なるものを開発し,仮想結び目不変量との関連性を明らかにする.
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次年度使用額が生じた理由 |
引き続き,既存の計算機で計算実験が実施できたため. 予定していた国内研究出張ができなかったため.
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