研究実績の概要 |
行列・作用素解析の研究と量子情報への応用的研究を行い,所定の成果を得た. 瀬尾(大阪教育大), 和田(木更津高専)との共同研究により,従来型の安藤-日合不等式を改良するとともに,作用素パースペクティブ(遠近法)に対する安藤-日合不等式,リー-トロッター公式,非可逆正作用素への拡張問題などを研究した.Y. Lim(韓国)との共同研究により,無限次元ヒルベルト空間上の可逆正作用素からなるトンプソン距離をもつ完備距離空間上の確率測度に対する作用素平均の概念を定式化し,不動点を用いた手法で確率測度の作用素平均について多くの結果を示した.また別の単著論文で,従来の2変数の久保-安藤の作用素平均とn変数の作用素平均について,不動点法による詳細な考察を行った.Y. Lim, J. Lawson(米国)と引き続き共同研究を行い,正定値行列の空間上で作用素平均から派生した非斉次のKarcher型作用素方程式について,ランベルトのW関数と関連づけて研究した.さらに,幸崎(九州大名誉教授)との共同研究により,フォン・ノイマン環に付随する非有界作用素の種々のクラスにおいて,久保-安藤の作用素平均・作用素コネクションを拡張する理論を構築した. フォン・ノイマン環の設定で,量子情報で有用な相対エントロピーやレニィ・ダイバージェンスを一般化した量子f-ダイバージェンスとそれらのリバーシビリティ(復元可能性)への応用について解説した194ページのモノグラフをSpringerのMathematical Physics Studiesのシリーズから出版した.さらに,フォン・ノイマン環の基礎理論に関する250ページの講義録をヨーロッパ数学会(EMS)のLectures in Mathematicsのシリーズから出版した.
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