研究課題
今年度は,まずルーマニア核物理工学研究所の S. Carstea 氏と共同で,4次元のパンルヴェ方程式系の初期値空間について昨年度計算した結果を一般化し,基礎づけおよび例を与える論文を執筆し,専門誌に投稿した.この結果は,岡本-坂井理論の初めての本格的な4次元への拡張であり,この分野における基礎的な文献となることを図ったものである.また,単独で,4次元ガルニエ系の初期値異空間の計算をいくつかの方法でやり直し,対称性及び幾何学的な観点から木村弘信氏らの先行研究との比較検討を行った(論文準備中).次にこれも S. Carstea 氏と共同で,超対称KdV方程式からの簡約で得られる超対称上差分方程式系について,その特別な場合として得られる4次元常差分方程式について初期値空間の観点から研究を行った.その結果,2次元の離散パンルヴェ方程式を線形写像で膨らませたような構造をしていることが分かった.これは,Grammaticos-ramani らによる「特異点閉じ込めテスト」を通らない4次元系であるが,それにもかかわらず,代数的に安定になるような不確定性解消は行えることを示した(論文準備中).また,4月にはノーザンコロラド大学の A. Dzhamay 氏との共著論文が出版された.これは,坂井理論を応用して,与えられた差分方程式をきれいな形をした標準的なものに変換する式を見つける方法について論じたものである.三亜(中国)および福岡で開かれた国際研究集会で講演を行った.共同研究を進めるため,ノーザンコロラド大学の A. Dzhamay 氏を招聘した.
2: おおむね順調に進展している
高次元力学系の初期値空間についての研究が進展し,さらなる発展の可能性も高いから.
高次元力学系の初期値空間についてさらに研究する.特に4次元のパンルヴェ方程式系について調べ,分類を行う.まずは,線形方程式のモノドロミー保存変形の立場から分類がほとんど完成している微分方程式系の場合について初期値空間を調べ,それを足掛かりとして4次元離散パンルヴェ方程式系の分類問題に取り組みたい.また,一部から指摘されている,q差分方程式の初期値空間とクラスター代数との関係について明らかにしたい.
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すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (1件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 2件、 招待講演 1件)
SIGMA. Symmetry, Integrability and Geometry. Methods and Applications
巻: 18, Paper No. 075 ページ: 20pp
https://doi.org/10.3842/SIGMA.2018.075