研究課題/領域番号 |
17K05277
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
小沢 登高 京都大学, 数理解析研究所, 教授 (60323466)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 作用素環論 / 関数解析 / 群論 / Banach空間論 |
研究実績の概要 |
本研究計画では「関数解析的群論」の標語のもと研究を行っている。これは作用素環論をはじめとする関数解析的手法を離散群の代数的、幾何学的な構造の解析に応用するというものである。2018年度は群論とは必ずしも関係ない関数解析の諸問題を扱った。群論への応用は今後の課題である。 (1)東京大学の森迪也氏と共同研究を行い、作用素環に対するマズール=ウラム問題をほぼ満足のいく形で解決した。マズール=ウラム問題はバナッハ空間の単位球の間の距離同型が全空間の線形同型に拡張するかという問題である。この問題に対処するために、凸体に対する古典的なマンキェヴィチの定理(1972)を半世紀ぶりに拡張したが、この定理には更なる応用が期待される。論文はStudia Mathematicaから出版される予定である。 (2)ギリシャ・エーゲ大学のM. Anoussis教授とベルファスト・クィーンズ大学のI. G. Todorov教授と作用素環の超反射性に関連した共同研究を行い、作用素環上のベクトル線形汎関数に対するノルム公式を証明した。論文はProceedings of the American Mathematical Societyから出版される予定である。 (3)昨年に引き続きミツキェヴィチ大学のM Kaluba准教授と共同研究を行い、カジダンの性質(T)に関する数値実験を行った。残念なことに期待した結果は観察されなかったが、これは我々の期待が高すぎたためと考えられる。現在、より穏健な予想を構想中である。そのための数値実験を引き続き行う予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
森迪也氏との共同研究で得られた作用素環に対するMazur--Ulam問題の解決は、この方面の研究を全面的に書き換えるものであり価値の高いものである。 M Kaluba氏との共同研究ではさらなる数値実験を行う必要があるが、どのような結果に結びつくかは現時点で不明である。
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今後の研究の推進方策 |
今後も関数解析的群論の研究をさらに推し進めるつもりである。また群とは必ずしも関わりのない作用素環論の研究にも注力するつもりである。最新の研究動向の情報収集のため、2019年度はOberwolfachの研究集会やICMATの量子情報関連の研究集会に参加する予定である。またさらに複数の国際研究集会への参加を予定している。
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次年度使用額が生じた理由 |
オスロ大学出張にかかる航空券代のために割り当てていた分が、交渉の結果、先方負担となったため。この分は2019年度の出張に使われる予定である。
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