研究課題/領域番号 |
17K05280
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研究機関 | 鳥取大学 |
研究代表者 |
井上 順子 鳥取大学, 教育支援・国際交流推進機構, 准教授 (40243886)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 表現論 / 非可換調和解析 / 複素解析的誘導表現 / 可解リー群 |
研究実績の概要 |
指数型可解リー群Gにおいて、そのリー環gの実線型形式fおよびgの複素化においてfが定める双一次形式Bについて等方的な複素部分リー環hをとり、これから群Gの複素解析的誘導表現ρを構成する。ρはhとgの交わりに対応する部分群DとD上fが定めるユニタリ指標からの誘導表現の部分表現である。ρが零表現でないための条件と、零表現でない場合にρの既約分解を求めることが目標であるが、PenneyのAbstract Plancherel定理により、Gの各既約表現πにおいて、(f,h)に関して半不変な超関数ベクトル(一般ベクトル)の空間が基本的な情報を与えると考えられる。例えばhが実部分リー環の場合、表現ρは単項表現であり常に零でない表現であるが、特に群Gが連結単連結冪零リー群のときはπにおける半不変超関数ベクトルの空間の次元はπの重複度に等しいこと(一般化された「相互律」)が藤原英徳氏の研究により示された。この他の場合においても「相互律」が成り立つかどうかは基本的な問題である。 本研究では、当研究代表者がこれまでの研究において指数型可解リー群の複素解析的誘導表現の例で得た結果を踏まえて、新たに4次元の完全可解振動子群(Boidol's group)において、1次元の複素部分リー環からの複素解析的誘導表現を調べ、(例1)ρは零表現であるが、Gの正則表現のPlancherel測度に関し殆どすべての既約表現において半不変な超関数ベクトルが1次元の空間をなす例、(例2)ρは零でなく、Gの既約表現の無重複な直積分に分解し、正則表現において殆どすべての既約表現に対して「相互律」が成り立つ例、を得た。(例1)は複素解析的誘導表現において、「相互律」の観点から単項表現の場合と異なる現象を示している。結果(例1)については2017年12月にチュニジアで開催された国際研究集会で講演発表を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は可解リー群の複素解析的誘導表現の計算例に比較的重点を置いて研究を進めた。完全可解振動子群の表現を調べる過程で、(1)複素解析的誘導表現が零表現であっても群の正則表現のPlancherel測度に関してほとんど全ての既約表現の半不変超関数ベクトルの空間が零でない例、および(2)「相互律」が成り立ち、既約分解を与えるintertwining作用素を具体的に構成できる例、を見出した。前者(1)は半不変超関数ベクトルの解析に関して単項表現の場合と異なる新しい結果である。これをチュニジアで開催された国際研究集会で報告した。 指数型可解リー群の群環の構造解析については研究情報の収集と検討を行い、次年度に向けて準備を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
本年度に得られた完全可解振動子群の表現の例について、「相互律」の観点から更に詳しく調べ、その結果を踏まえて複素解析的誘導表現における半不変超関数ベクトルの解析を継続して行う。また、指数型可解リー群の群環の構造解析およびLpフーリエ変換のノルムに関する研究について研究情報の収集と並行して具体的な計算を進める。 次年度は研究集会「表現論シンポジウム」において世話人を務める予定であり、この集会での研究交流を通して本研究に関わる表現論・調和解析の研究議論・考察を深めたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初参加を予定していた研究会のうち、日程上都合がつかず、参加を取りやめたものがあり、結果として今年度未使用額が生じた。 次年度は「表現論シンポジウム」等、研究交流の機会に表現論・非可換調和解析の研究情報の収集・研究議論を行い、研究を推進する。このための旅費や会議費等を今年度の未使用額を合わせた本研究費から支出する計画である。
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