研究実績の概要 |
「作用素論-作用素環論」研究集会が、コロナ感染が下火になった11月に九州大学で対面とリモートのハイブリッド形式で実施され、私は「作用素平均と行列2次方程式」の題目で講演を対面で行った。日本数学会例会(2022年3月埼玉大学)で「Operator means and matrix quadratic equations」の題目で講演した。但し、直前に対面講演は中止になり、アブストラクトを公開することにより実施された。日本数学会発行雑誌「数学」に私の書評「Simon ‘Loewner’s Theorem on Monotone Matrix Functions’ (Springer 2019)」 が掲載された。 2021年度の研究内容について説明する。算術平均、調和平均については可算個の行列(作用素)について自然に定義される。3個以上の行列の幾何平均が合理的に定義されたのはそれほど古くはない。2個の行列に対する対称的な平均を3個以上の行列の対称的な平均に拡張することが予想問題として2005年に提起されていた。2013年に Palfia 氏によって証明されたが、それは複雑なものであった。私は証明の基本となる距離として作用素ノルムを用いた簡潔で自然な証明を与えた。 2個の正定値行列 A, B に各種の対称的な平均が定義されるが、ある平均が、A, B の線形結合で与えられるならば、他の平均も同様に線形結合で表されることを示し、そのための必要十分条件を固有値を用いて与えた。更に、その際の線形結合の係数が一致するための条件は固有値の積が 1 であることを示した。 3個の正定値行列 A,B,C については、A,B の幾何平均がA,Bの作る平面上にあり、B,C の幾何平均、C,Aの幾何平均も同様にそれぞれの平面上にあれば、A,B,C の幾何平均はA,B,C の作る空間にあることを示した。
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