研究課題/領域番号 |
17K05287
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研究機関 | 北海道教育大学 |
研究代表者 |
小室 直人 北海道教育大学, 教育学部, 教授 (30195862)
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研究分担者 |
三谷 健一 岡山県立大学, 情報工学部, 准教授 (00468969)
斎藤 吉助 新潟大学, 自然科学系, フェロー (30018949)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | James定数 / von Neumann Jordann 定数 / Birkhoff 直交 / Radon 空間 |
研究実績の概要 |
平成29年度に得られた主要な研究成果は、以下のとおりである。 1.3次元以上のノルム空間のJames定数が√2となるのは内積空間であることが必要十分となっているが、2次元ノルム空間では内積空間以外でも√2となる例が多く存在する。45度回転不変ノルムは全て√2となること、90度回転不変ノルムで√2となるノルムは45度回転不変なものに限ることなどが既知となっているが、今回の研究では、2次元ノルム空間のJames定数が√2となる条件を与え、それを用いてJames定数が√2で90度回転不変でないノルムの例を複数構成し、更には、Lassak予想に対する反例を与えた。 2.James定数とvon Neumann-Jordan定数(NJ定数)の関係に関する研究は多いが、James定数が√2となるノルム空間の NJ定数の上限値は知られておらず、現在までに知られる最もシャープな評価式が示す上界の集合は依然大幅に改善できると見られている。今回の研究では、対称 absolute ノルムに制限した場合、その上限値は既知の結果を大きく改善する 4-2√2であることを示した。 3.ノルム空間とその双対空間について、それらの NJ定数は常に一致するのに対し、James定数では一致するとは限らない。一致するための必要十分条件は現在のところ未知となっている。2次元ノルム空間について、これまでに段階的に一致するための十分条件が改善され、全ての対称 absolute ノルムで一致することが確かめられていた。L_pノルム等多くの主要なノルムは、対称 absolute ノルムである。今回の研究では、90度回転不変ノルムであることが十分条件であることを示した。この条件を満たすノルムの集合は、対称 absolute ノルムのクラスより大幅に広く、これまでの結果を一歩進めるものである。更には、従来の証明を大幅に簡略化した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2次元ノルム空間で James定数が√2となる例は当初の予測より多く、多様な例を構成できることが分かってきた。同時にそれらの具体例をもとにした新たな結果が得られるなど順調に研究が進んでいる。 James定数が√2となるノルム空間の von Neumann-Jordan定数の上限値については、これまでに知られている結果を大幅に改善できるという見通しの下、研究を続けている。現在のところ最終結果は得られていないが、対称absolute ノルムに制限した場合、単位球が正8角形となるノルムの von Neumann-Jordan定数 4-2√2 が上限値であることなどが得られている。 90度回転不変ノルムは考察対象となって数年の歴史しかないが、James定数が双対空間で一致するための十分条件を与えるなど、これまでにいくつかの興味深い結果が得られている。研究目的に挙げた、ノルム空間における直交性に関する研究では、現在、Birkhoff直交性が可換となる2次元Radon空間の考察を中心に研究を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
29年度の研究成果を踏まえ、30年度以降に取り組む主要な課題は次のとおりである。 1.2次元ノルム空間で、James定数が√2となるための条件が得られたが、そのようなノルムでの von Neumann-Jordan 定数の上限値を確定するために、そのようなノルムの更に詳細な性質が必要となる。James定数が√2となる新たな例を構成するなどにより、必要な条件が得られると考えている。更に、これら2つ定数の間に成り立つ最良の不等式を得ることは最終的な目標となる。これについては、2次元の場合と3次元以上の場合で評価式が全く異なると見られ、別のアプローチが必要であると予想される。 2.ノルム空間の直交性のひとつの定義として知られる Birkhoff直交性について考察する。この直交性では、交換法則が一般には成り立たないが、特に成り立つノルム空間を Radon空間と呼ぶ。3次元以上では、内積空間以外に Radon空間はないが、2次元空間では Radon空間となるノルムの例は無限にある。2次元ノルム空間が Radon空間になるための条件を求めることが当面の課題である。
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次年度使用額が生じた理由 |
共同研究者(田中遼太郎氏)の転勤に伴い、研究会の実施を次年度に繰り越したため。 当該研究会は、2018年6月に、東京理科大学(北海道長万部町)にて開催予定である。
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