研究実績の概要 |
幾何Brown運動の時間積分により定まる指数Brown汎関数とBrown運動自身との結合確率分布は, いわゆるHartman--Watson分布の(非正規化)密度関数を用いて記述されることが分かっている(M. Yor, 1992年). また, このHartman--Watson密度関数は, Yorの公式(1980年)として知られる積分表示をもつ. 指数Brown汎関数は数理ファイナンスのアジアオプションに現れるほか,ランダム環境下の拡散過程や双曲空間上のラプラス作用素の確率解析においても重要である.2019年度の研究では主に, 前年度に引き続きHartman--Watson密度関数の積分表示について考察を行った. その結果, 前年度までの研究で得られていた, Yorの公式とは異なる複数の積分表示を包括する積分等式を見出し, それを用いることによってさらなる種類の積分表示が導かれることが分かった. またこの積分等式から, 上述のYorの1992年の結果を, Hartman--Watson密度関数の一つの積分表示と合わせて再現することも可能である. これらの研究成果を応用とともにまとめた論文を現在学術誌に投稿中であり,また,プレプリントサーバarXiv.orgにおいて,“Integral representations for the Hartman--Watson density”とのタイトルの下でその原稿を公開している.
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