研究実績の概要 |
離散時確率過程h={h(n)}に対し、その極大関数をMh=sup{|h(n)|:n=1,2,3,...}で定義する。この記法の下、(1/p)+(1/q)=1であるような2つの指数p, q及び一様可積分な2つマルチンゲールf={f(n)}, g={g(n)}に対し、不等式E[M(fg)]≦E[f(∞)^p]^(1/p)E[g(∞)^q]^(1/q)が成り立つ.但し、E[x]は確率変数xの期待値を表し、実数A, aに対し、A^aと書いてAのa乗を表すものとする。E[f(∞)^p]^(1/p)はL^p-空間におけるf(∞)のノルムであり、E[g(∞)^q]^(1/q)はL^q-空間におけるg(∞)のノルムであるが、これらのノルムを一般のBanach関数空間X及びその連携空間(associate space)X'のノルムに置き換えてできる不等式、すなわち、E[M(fg)]をf(∞)のXにおけるノルムとg(∞)のX'におけるノルムの積で評価する不等式が成立するための必要十分条件(そのようなXの特徴付け)を考察した。その結果、少々課題は残ったものの、ほぼ予想通りの結論を得ることができた。 他の多くのマルチンゲール不等式が成立するようなBanach関数空間Xの特徴付けと同様に、考察した不等式がXにおいて成立するためには、Xが再配列不変でなければならない。この条件に、XのBoyd指標に関する条件を付加することで、求める必要十分条件が得られる。但し、まだ証明に不完全な部分が少々残っているので、引き続きこの研究を進めたい。 尚、多くのマルチンゲール不等式の成立するBanach関数空間が再配列不変性を持つことは、それらの不等式がフィルトレーションに依存せずに成立することから導かれる。今後は、1つのフィルトレーションに限定した上で、種々のマルチンゲール不等式が成立するための条件を研究したい。
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