研究課題/領域番号 |
17K05296
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
木坂 正史 京都大学, 人間・環境学研究科, 准教授 (70244671)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 超越整関数 / 構造有限超越整関数 / 中立サイクル / Siegel点 / Cremer点 / 多項式類似写像 / Julia集合 |
研究実績の概要 |
当初の計画中の(I)「個々の超越整関数の力学系の多様性について」と(II)「整関数の(自然な)パラメータ族の中での多様性」に関する研究を行った.得られた結果は以下の通りである:Speiserクラスの中でも特に具体表示を持つ「f(z)=P(z)e^Q(z)(P(z),Q(z)は多項式)」という型の超越整関数について,特に中立サイクルを持つ場合の様々な可能性について研究した. (1)任意の自然数qに対して,原点以外にq個のSiegel不動点を持ち,対応する各Siegel円板の境界が擬円となり,しかも臨界点を少なくとも1個ずつ含むようなものを構成した.更に各Siegel円板の境界上の臨界点の個数がちょうど1個となるようなものも構成した. (2)任意の自然数qに対して,Cremer点をq個持ち,各Cremer点での乗数が[Cremer(d)]と呼ばれる条件を満たすようなものを構成した(dは構成する際に定まるある自然数).なおこの条件はd次多項式の中立サイクルがCremer点であることを保証するものであるが,超越整関数に対しては一般に適用できない. (3)乗数がEというあるクラス(Diophantus数を含み,Bryuno数全体に含まれるもの)に含まれるような中立不動点を持つ超越整関数の1-parameter族で,Julia集合のLebesgue測度が0となるparameterが開集合を含むようなものを構成した. (1)~(3)の結果の証明の主なアイデアは「考えている関数を適当な有界単連結領域に制限すると多項式類似写像の構造を持つことを示す」というものである.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初主目的としていた2次多項式族に関する研究には,初年度以降にはあまり進展が見られていない.また超越整関数のJulia集合の計量的性質に関する研究については,考察はしているもののまだ目立った成果が上げられていない.整関数の族の中での多様性についてはパラメーター空間の研究にまでは至っていないが,過去の成果に引き続いて上記の実績の概要で述べたような成果は上がっている.全体的にはまだ満足のいくところまでは到達していない.
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今後の研究の推進方策 |
今後も主目的である2次多項式族に関する研究は依然継続しつつ,超越整関数の力学系の研究,特に有限型超越整関数の力学系の多様性について引き続き考察したい.場合によっては超越有理型までクラスを広げて考える方が良いと考えている.またJulia集合の位相的性質・計量的性質の研究も引き続き行う.また課題解決の考察をしているうちに他のおもしろい現象や新たな問題を発見することも十分考えられる.当初の実施計画にあるもののみを考察するようなことはせず,このような発見があった場合は臨機応変に対応する予定である.
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウィルスの感染拡大により,2022年度に参加予定であった研究集会の多くは中止またはオンライン開催(一部はハイブリッド開催)となったため,予定していた旅費・滞在費が使えなくなってしまった.繰り越した助成金は,一部は外国人研究者招聘に使用し,残りは自身の旅費・滞在費,また物品費として使用する予定である.
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