研究実績の概要 |
今年度は前年度の3つの研究を引き続き行った。 (1) Sergio Albeverio, Michael Roeckner両氏と(cut-offが入った)exp(\phi)_{2}-量子場の確率過程量子化に現れる無限次元拡散過程の研究を主にDirichlet形式を用いて行っているが, 本年度はDirichlet形式の生成作用素の本質的自己共役性についてのプレプリントの執筆に集中し, 近日中にarXivに公開できそうな状況まで来た。また研究分担者の楠岡誠一郎氏の協力も得て, 特異確率偏微分方程式の視点からこの拡散過程を直接構成できないかどうかを, Albeverio-楠岡の\phi^{4}_{3}量子場に対する特異確率偏微分方程式の最新の研究成果なども組み合わせて, 検討を行った。
(2) 研究協力者の石渡聡氏および大学院生の難波隆弥氏と行っているベキ零被覆グラフ上の非対称ランダムウォークの中心極限定理に関する共同研究で, 前年度は2種類の汎関数中心極限定理を得ることに成功したが, プレプリント2編をarXivに公開した。現在, 査読付き雑誌に投稿中である。また7月の北京での国際研究集会において招待講演を行った。
(3) 抽象Wiener空間上の(元のWiener測度に絶対連続な)Gauss測度全体の集合にWasserstein距離を入れると非負断面曲率をもつ非完備な無限次元Riemann多様体になることは, 前年度までに高津飛鳥氏との共同研究で得られていたが, 今年度は京都大数理解析研究所での国際研究集会でこの成果の招待講演を行い, 高津氏との共著論文の改訂作業を引き続き行っている。
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今後の研究の推進方策 |
研究テーマ(1)については, 論文を最後にまとめあげる際に海外の共同研究者との更なる研究打ち合わせが必要となってくるので秋に海外出張を予定している。現在のところ得られた結果をさらにブラッシュアップするためには, 研究分担者だけでなく, 特異偏微分方程式の理論に詳しい研究者との連携も重要になってくる。また研究テーマ(3) については夏に九州大学で行われる日本数学会季期研究所や福岡大学で行われる日独研究集会で, ランダム行列に詳しい国内外の研究者と積極的に交流をはかり, 研究の充実を目指したい。
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