研究実績の概要 |
研究論文:査読付きのものとして, 2編の論文を雑誌に掲載した。それらのうち一方は, 非線形シュレディンガー方程式(NLS)の解のL^∞減衰オーダーの最適性に関するもので, Journal of Applied Science and Engineering A に掲載され出版済みである。この研究は,光ファイバー内部を伝わる信号の形状変化を数学的に解明するもので, 光ファイバーによる情報伝達がどれくらいの距離まで可能なのか理論的に予測する際に有効である。今後の研究の方向性として「空間次元の高次元化」と「L^q減衰オーダーの最適性」が挙げられる。他方の論文は, 中村能久氏(熊本大学)との共著で, 行列値の未知関数を含むNLSの解の漸近挙動に関するもので, Linear and Nonlinear Analysis (Yokohama Publ. Special Issue) に掲載され出版済みである。この方程式は,ボーズ・アインシュタイン凝縮流体中の粒子のスピン状況を予測するものである。研究結果として,非線形項の係数の関係に応じて, 時刻無限大における解の振る舞いが修正付きの自由状態になったり,修正無しの通常の自由状態になったりすることがわかった。 研究成果の発表:①4月上旬にモンゴルにて開催された国際研究集会FICASEにおいて, NLSの解のL^∞減衰オーダーの最適性について講演した。②7月中旬にロシアで開催された国際workshopにおいて,1次の消散項を含むNLSの解のL^∞減衰オーダーの最適性について研究成果を発表した。③10月下旬にモンゴルで開催された国際共同workshopにおいて, δ関数を初期値にもつNLSの時間大域解の存在について講演した。④11月中旬に中国で開催された工学workshopにて,δ関数を初期値にもつNLSの時間大域解の存在について講演した。
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今後の研究の推進方策 |
【今後の推進方策】①NLSの解の減衰オーダーが最適なものであるかどうか,当初はL^∞ノルムで考察していたが,これをL^qノルムに拡張して考察を進める。実は,L^2ノルムによる解の減衰オーダーについて若手の研究者が結果を出している。それによると,減衰オーダーがデータの正則性に依存することが知られている。しかし,最適と思われている減衰オーダーには届いていない実情もある。研究の方向性として,最適な減衰を示すデータの必要条件を見出すことが挙げられよう。②G.P.Agrawalによって1990年代に提出されたNLSについて,解の挙動が未だによくわかっていない。最近,反応拡散方程式の研究者がよく用いる解析手法が適用できるのではないかと思うようになってきたので,定常解の安定性解析を行う予定である。この目的のために,反応拡散方程式の研究者と研究集会を共同開催することが有益であると思うようになった。③データが空間遠方で悪い減衰を示す状況でNLSの解の漸近挙動を捉えたい。既存の結果では,データが十分早く減衰することが仮定されているが,これを緩めることによって,解が漸近自由か否かの分かれ目となる非線形項のベキ(臨界指数)が1+2/nから変わることが期待される。似たような問題をNishihara-Narazakiが非線形波動方程式で取り扱っているので,この理論がNLSにも適用可能かどうか研究を行いたい。 【課題】コロナウィルスの蔓延で海外の研究集会への出席が今後難しくなることが予想される。しかし、ZOOMなどを活用してオンラインで研究集会を開催するという工夫も出始めているので、この風潮に乗り遅れないように心がける。現在、所有しているコンピュータ―にはカメラ機能が付随していないので、ZOOMに対応するためにカメラ機能付きのPCを購入することになりそうである。
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