非線型分散型方程式(特に非線形シュレーディンガー方程式)に関する解の漸近挙動に関する研究成果を挙げることができた。非線形シュレーディンガー方程式に関する研究では、消散型の非線形項を含むもので解の減衰評価を得ることと、その減衰評価が最適なものであることを示した。具体的に、空間 n 次元(ただし、1≦n≦3)で、非線形項のベキ p が、臨界ベキ p=1+2/n の場合に解の L^∞ ノルムが t^{-n/2}(log t)^{-n/2} のオーダーで減衰し、することを示した。劣臨界ベキ p<1+2/n の場合では、解の L^∞ ノルムが t^{-1/(p-1)} のオーダーで減衰することを示した。これらは、ベキが優臨界 p>1+2/n の場合とうって変って、非線形消散効果が減衰オーダーに如実に現れることを示している。以上の L^∞ ノルムの減衰オーダーが最適であること、つまり、t^{-n/2}(log t)^{-n/2} や t^{-1/(p-1)} よりも L^∞ ノルムの減衰が早いと、その解は自明解(恒等的に 0)であることも示すことができた。佐藤拓也氏との共同研究では、解の L^2 ノルムの減衰オーダーに関する成果を挙げることができた。この共同研究では、L^∞ ノルムの減衰と大きく異なる事実が判明した。詳細を述べると、L^∞ ノルムの減衰オーダーはデータの正則性に依存しないで一定であるが、L^2 ノルムの減衰オーダーはデータの正則性に依存して決まるということである。データの正則性を高めると、L^2 ノルムの減衰オーダーは、p=1+2/n のとき (log t)^{-n/2} を、p<1+2/n のとき t^{-1/(p-1) + n/2} を目指して早くなることがわかった。
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