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2017 年度 実施状況報告書

解析的手法によるメビウス・エネルギーの研究

研究課題

研究課題/領域番号 17K05310
研究機関埼玉大学

研究代表者

長澤 壯之  埼玉大学, 理工学研究科, 教授 (70202223)

研究期間 (年度) 2017-04-01 – 2021-03-31
キーワードメビウス・エネルギー / O'Haraエネルギー / 分解エネルギー / 変分公式 / 等周不等式 / 補間不等式 / 曲率流 / 凸化
研究実績の概要

1.メビウス・エネルギーは、O'Haraエネルギーとして知られる結び目のエネルギーの一つであり、メビウス不変性を持つ事がその名前の由来となっている。メビウス・エネルギーについては、メビウス不変性を保ったまま、結び目の曲がり具合を測る第1エネルギー、捩じれ具合を測る第2エネルギー、絶対定数の部分に分解できることが知られている。このような分解は、メビウス・エネルギー以外のO'Haraエネルギーでは知られていない。今年度は、O'Haraの(α,1)エネルギーについて同様の分解が成り立つ事を示した。αが2の場合がメビウス・エネルギーである。αが2以外の場合はエネルギーにメビウス不変性がないので、分解エネルギーのメビウス不変性は考慮していない。この分解は更に一般化されたO'Haraエネルギーについても成り立つ。副産物として、メビウス・エネルギーの場合の余弦公式に相当する等式を導く事ができた。また、分解を用いる事で、エネルギーの第一・第二変分公式を系統的に求める事が出来る。以上の結果を論文として投稿した。
2.平面閉曲線の長さとそれが囲む領域の面積の間には、等周不等式が成り立つ。この不等式が等号となるのは円の場合、すなわち曲率が定数の場合に限る。定量的には、1と等周比の差は曲率とその平均値の差の重み付L^2ノルムで評価される。逆向きの評価は成り立たないが、重み付L^2ノルムを1と等周比の差と曲率の導関数の重み付きL^2ノルムを用いて補間評価が可能である事を示した。これらと従来知られるGagliardo-Nirenbergの不等式を組み合わせることで、閉曲線の曲率に特化した一連の補間不等式が得られる。この不等式により、Jiang-Panの非局所項を持つ曲率流や面積保存曲率流の大域解の挙動が曲線の凸性を仮定せずに行え、大域解の有限時刻凸化を示す事が出来た。この結果の論文を作成中である。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

メビウス・エネルギーの分解はエネルギーの構造の解析に寄与した。分解の証明にはメビウス不変性を用いられておらず、むしろメビウス不変性は分解の帰結ともいえる。そのため、メビウス不変性に目を瞑れば、O'Haraエネルギーについても分解が可能ではないかと考え、分解に成功し、エネルギー構造を明らかにすることが出来た。これは、勾配流の挙動の詳細に必要なものである。
一方、平面閉曲線の長さに関する制約条件付き勾配流の漸近挙動の解析に役立つ一連の不等式を得た。従来、初期曲線が凸という仮定の下で行なわれていた漸近解析が、凸性を仮定しなくても行えるようになった。今年度は、Jiang-Panの非局所項を持つ曲率流と面積保存曲率流について不等式が有効である事を確認したが、その他の勾配流でも有効であると考えている。
今年度の研究成果発表は、国内外を含めて8回行った。論文については、1編を投稿し、その他に2編を作成中であるが、今年度中に出版されたものはない。そのため、進捗状況は「おおむね順調」と評価した。

今後の研究の推進方策

メビウス・エネルギーに対する余弦公式は、エネルギーのメビウス不変性を示す事に用いられた。メビウス・エネルギー以外のO'Haraエネルギーは、メビウス不変性を持たないため、このような公式は知られていなかったが、本研究で得た分解定理の証明の仮定で、メビウス不変性を持たないにも関わらず余弦公式に相当する等式が得られた。この等式が何らかの幾何学的な意味を持つのか否かを考えたい。
平面曲線の曲率に対する補間不等式は曲率流のような2階の放物型方程式で書ける勾配流には有効であった。Willmore流のような4階の放物型方程式に対して有効であるかを確かめたい。また、この不等式は平面閉曲線に対するものであるので、結び目については有効でない。空間曲線について同様な補間不等式が存在するのかを調べる。この場合は、曲率とその導関数だけでなく、捩率とその導関数も必要だろう。また、等周比に相当する幾何学量をどう設定するかが問題となる。
補間不等式と、具体的に書き下す事が出来たO'Haraエネルギーの変分公式により、勾配流の挙動の解析に取り組みたい。

次年度使用額が生じた理由

本年中に作成した論文の英文校正を2月に行った。その費用が想定した額より少なくて済んだため、1万円強の残金が生じた。

  • 研究成果

    (11件)

すべて 2018 2017 その他

すべて 国際共同研究 (1件) 学会発表 (8件) (うち国際学会 2件、 招待講演 4件) 備考 (1件) 学会・シンポジウム開催 (1件)

  • [国際共同研究] ザルツブルク大学(オーストリア)

    • 国名
      オーストリア
    • 外国機関名
      ザルツブルク大学
  • [学会発表] Recent topics on O'Hara's energies of knots2018

    • 著者名/発表者名
      T. Nagasawa
    • 学会等名
      Saga Workshop on Partial Differential Equations
    • 招待講演
  • [学会発表] 一般化されたO'Haraエネルギーの分解について2018

    • 著者名/発表者名
      石関 彩, 長澤 壯之
    • 学会等名
      日本数学会2018年度年会 函数方程式分科会
  • [学会発表] A Moebius invariant descretization and decomposition of the Moebius energy2017

    • 著者名/発表者名
      T. Nagasawa
    • 学会等名
      Recent Topics on Energy of Knots
    • 国際学会
  • [学会発表] 分解されたMoebiusエネルギーのMoebius不変なエネルギー密度による別表現2017

    • 著者名/発表者名
      S. Blatt, 長澤 壯之
    • 学会等名
      日本数学会2017年度秋季総合分科会 函数方程式分科会
  • [学会発表] MoebiusエネルギーのMoebius不変な離散化と分解2017

    • 著者名/発表者名
      S. Blatt, 長澤 壯之
    • 学会等名
      日本数学会2017年度秋季総合分科会 函数方程式分科会
  • [学会発表] A Moebius invariant descretization and decomposition of the Mobius energy2017

    • 著者名/発表者名
      T. Nagasawa
    • 学会等名
      1st Workshop on Geometric Curvature Functionals and Discretization
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] MoebiusエネルギーのMoebius不変な離散化と分解2017

    • 著者名/発表者名
      長澤 壯之
    • 学会等名
      第7回室蘭非線形解析研究会
    • 招待講演
  • [学会発表] O'Haraエネルギーの分解とその帰結2017

    • 著者名/発表者名
      長澤 壯之
    • 学会等名
      第7回室蘭非線形解析研究会
    • 招待講演
  • [備考]

    • URL

      http://www.rimath.saitama-u.ac.jp/lab.jp/TakeyukiNagasawa.html

  • [学会・シンポジウム開催] Recent Topics on Energy of Knots2017

URL: 

公開日: 2018-12-17  

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