研究実績の概要 |
前年度に引き続き非線形熱方程式の解の正則性について研究を行った。特に、べき乗型非線形項をもつ方程式(藤田型方程式)においてSobolev優臨界の場合に解が局所的に滑らかになることを保証するε正則性定理に関する研究を高橋仁氏(東京工業大学) と共同で行った。半線形熱方程式においては先行研究としてChou、Du、Zheng(2007, Calculus of Variations and Partial Differential Equations)やBlatt, Struwe(2015, International Mathematics Research Notices)による結果があったが、前年度我々は時間大域的に定義されているとは限らない弱解に対して考察を行い、方程式を不変とするようなスケール変換に関して不変となる空間臨界Lebesgueノルムが時間に関して一様有界となるような弱解に対し、方程式に付随するエネルギーに現れる二種の局所積分量が小さいとき、時空間において局所的な正則性を示した。今年度、このε正則性定理について、弱解の臨界Lebesgueノルムに関する仮定を弱めた上で、局所積分量に関する仮定も一種のみの条件に弱めることに成功した。このようなε正則性定理の改良は爆発時刻における解のスケール臨界ノルムの挙動を調べる上で重要な役割を果たす。特に解の仮想的な特異点近傍においてリスケールされた解の列の極限が非自明であることを示す際に鍵となる。
|