研究課題/領域番号 |
17K05313
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研究機関 | 東京海洋大学 |
研究代表者 |
大縄 将史 東京海洋大学, 学術研究院, 准教授 (10443243)
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研究分担者 |
鈴木 政尋 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (30587895)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | hydraulic jump / 緩和的双曲型保存則系 / 周期解 |
研究実績の概要 |
浅水流における自由境界問題の研究対象として,hydraulic jump(跳水)と呼ばれる状態の数学的な解析に取り組んでいる.現実の例として最初に,山を越える気流が強く加速される現象(おろし風と呼ばれる)を扱った.流体力学的には山頂より風上側の亜音速流が山を越える際に連続的に超音速に加速され,山の風下側で不連続に亜音速に戻ることをいう.方程式系として浅水方程式系を採用するが,粘性項や緩和型の摩擦項がない場合には1960年代に気象学者によって無限遠での状態に応じた漸近形が予測されていた.しかし安定性解析を念頭に粘性項を含めた場合,亜音速から超音速に連続的に加速される定常解は存在しないことが分かった. そこで粘性項の代わりに摩擦項を含め,それに伴って斜面を下る流れを扱った.現実の例は河川の堰に典型的に見られる.この問題の場合は斜面の勾配が波形を支配するが,斜面の勾配がある程度きつい区間が存在するとき,この系の定常解にはhydraulic jumpとよく特徴が合致するものが含まれていることが分かった.摩擦項の形には様々なモデルがあるが,どのモデルでも定性的に同じことがいえる.地形によってはその他の定常解として亜音速のまま速度が連続的に上下する(水深も同様に変動)ものも存在することが分かった.斜面において観察される周期的な流れのroll wave(段波)を勾配一定の斜面に求めようとすると不連続を含む解しか存在しないという古典的な結果があるが,勾配の変動を考慮することで連続な振動解が存在することは興味深い. さらにroll waveに関連して,有界区間の片側で超音速流れが時間周期的に流入するとき,区間内の流れが周期流に漸近すると予想を立て,それについての解析を進めている.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究目標は浅水流における自由境界問題だが,その最も典型的な例であるhydraulic jumpを数学的に定義することができた.さらにずっと亜音速状態にある定常解の存在が確認され,過去の我々の研究から漸近安定性が示されることが期待される.さらに時間周期解の存在はかなり一般的な枠組みの下で証明を進めている.
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今後の研究の推進方策 |
地形によってはずっと亜音速で水深が連続的に上下する定常解が見つかったが,過去に類似の設定で漸近安定性を示しており,その手法を応用して本研究においても漸近安定性を証明することができると期待される.今後は周期的な勾配を持つ斜面を流れ下る,定常解以外の時間周期的な流れの存在について調べ,その安定性を考察する.そのために現在解析を進めている有界区間上の時間周期解への漸近解析が有効であると期待される. Hydraulic jumpについては,それを表現していると考えられる定常解が亜音速から超音速に遷移するため,上述のずっと亜音速の場合の解析自体は適用できないが,摩擦のない類似の系でL∞安定性は示されている.その手法を応用することで摩擦が含まれれば漸近安定性が示されると期待している.
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次年度使用額が生じた理由 |
2017年度は急な事情で打合せを見送ることがあったが、研究は順調に進んでおり、2018年度は予定通りの予算執行を見込んでいる。
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