本研究の目的は、気体の運動を表す圧縮性オイラー方程式の解の性質を数学的に調べることである。 まず、最終年度に実施した研究の成果について述べる。一つ目は、前年度に得られた1次元のオイラー方程式に対するグローバル・アトラクターの存在に関する結果に関して、いくつかの研究集会やセミナーで発表した。7月に岐阜大学、9月に北見工大、10月に名古屋大学、11月に東工大において、それぞれ発表した。コロナ禍で、かなりの間、研究発表をすることができなかったが、今年度は、多くの発表することができて良かった。二つ目は、台湾の研究者達と、ノズルの内部流の運動を表す方程式に対して、古典解(この場合は、1階連続微分可能な解)の時間大域的存在に関する研究を行い、結果を得ることができた。オイラー方程式は、一般には不連続解を持つ事が知られている。一方、1次元の場合は、特性速度が単調増加になるような初期値を与えれば、古典解をもつことが知られていた。しかしながら、ノズル流の場合は、古典解をもつ条件は知られていなかった。そこで、台湾の研究者の知見を用いることで、この問題を解決することができた。具体的には、半空間の初期値境界値問題に対して、古典解の時間大域的存在を示すことができた。この結果は、現在ジャーナルに投稿中である。また、現在は、全空間に対しても同様な結果を得られないか研究を進めている。解の導関数の有界性を示すとき、比較原理を用いる。その際、全空間の場合、劣解を構成することができないことが問題となっている。 最後に、研究期間全体を通じて得られた結果について述べる。1つは、上記に述べた1次元のオイラー方程式に対するグローバル・アトラクターの存愛に関する結果である。これは、解の漸近挙動につながる重要な結果であると信じている。この結果も現在投稿中である。二つ目は、上記の古典解に関する結果である。
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