研究課題/領域番号 |
17K05317
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
西田 孝明 京都大学, 情報学研究科, 名誉教授 (70026110)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 解析学 / 非線形偏微分方程式 / 大域的解析 / 計算機援用解析 / 特異摂動極限 / 流体運動方程式系 |
研究実績の概要 |
非圧縮性粘性流体運動方程式の定常解(形成されるロール型や六角形型のパターン等)を求める解析的および数値解析的方法として Chorin によって(1967)導入されたのは、方程式系に人工的圧縮性に当たる項(小さいパラメーターを含む圧力の時間微分項)を加えて、その方程式系の時間発展の極限として求める方法である。それによって Oberbeck-Boussinesq 方程式で記述される熱対流問題の例で数値的に定常解を得ていた。両者の方程式系の定常解は、その摂動項の入れ方から同じ集合を成している事がわかるが、すべての定常解がこの方法で得られるわけではない。定常解の安定性、不安定性に注目して、この方法の数値計算による有効性を確認するとともに、パラメーターが小さい時にその解析的な正当性を示した。パラメーターを小さくする極限を考察する特異摂動問題であり、線形化した系のスペクトルを特異な摂動部分と通常摂動部分とに分けて、詳しく解析することが必要であった。熱対流の Oberbeck-Boussinesq 方程式の場合と Navier-Stokes 方程式の場合を詳述した。定常分岐の解析においてもこの方法が適用できることも示唆される。 圧縮性粘性流体の平面 Poiseuille 流の線形不安定性が Mach 数が小さくない時には、 Reynolds 数が、非圧縮性流体の場合よりはるかに小さい時にも起こることを証明していた。この不安定性が、分岐により非線形進行定常波を生成することを見つけ、解析的に存在を示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
非圧縮性粘性流体方程式系の定常解を求め、その安定性をも調べる解析および数値計算において、非圧縮性のままで行うより容易な方法として、 Chorin の方法(人工的圧縮性摂動)が使えることを数値的にも、解析的にも明らかにした。 圧縮性粘性流体の平面 Poiseuille 流の線形不安定性およびその分岐により起こされる非線形定常進行波の生成が解析的に示せた。
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今後の研究の推進方策 |
研究計画に沿って実行する。 粘性流体運動方程式系の自由表面問題の解の時間大域的な存在証明に取組んでいる。 粘性流体の自由表面を境とする二層からなる Couette 流の解析では、界面に不連続な stress tensor が現れ、現有の方法では扱えないことが分かったために、将来の課題にまわす。代わりに一層で自由表面のある Couette 流のモデルの解析に取組む。 同じ二層流の静止状態からの摂動に関しては、予定通り取組む。 非圧縮性粘性流体の定常(時間によらない)解の分岐に対する Chorin の方法が、時間周期的な解の分岐問題にも用い得るかどうかが、新しい問題としてでてきた。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究会参加および研究連絡として計画していた、国立台湾大学数学教室(陳宜良教授、夏俊雄准教授)への出張で使用予定であったが、先方の研究組織 NCTS による招待研究者として先方より旅費として支給されたために次年度使用にまわすことができた。
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