研究実績の概要 |
Navier-Stokes 方程式で記述される非圧縮性粘性流体運動の自由表面問題を考察した。水平領域を満たす流体の上面が自由であり表面張力が働いている時の運動は、方程式の半線形性のみならず表面したがって流体領域が時刻とともに変化する非線形性を持つ。その初期境界値問題は、時間局所的には解かれている。その時間大域的な可解性、解の挙動を調べる為に、系を水平な帯状の領域に変換する。変換された方程式は、複雑な非線形方程式系になる。始めとしてその線形化方程式系の解の構成とその時間大域的な挙動を解析した。解の時間による減衰を調べ、時間の代数関数的な減衰評価を得た。重力と表面張力とが共に働いている場合(Beale-Nishida, 1986)と異なり、表面張力のみの場合は表面を表す関数の時間的減衰が遅いことが示せた。 この評価を用いることによって上記 Beale-Nishida にあるエネルギー法と合わせることにより、元の初期境界値問題の時間大域的な可解性を小さな初期値に対して示す準備ができたことになる。 水平領域にある流体の自由表面問題で表面上を一様に風が吹いている現象、あるいは上下二層の流体で上の流体が一様に動いている問題の解析は今後の課題であるが、そのモデルとして表面上での風の代用として水平方向の stress を与える時の解析を始めた。線形化した方程式のスペクトルを調べて stress の大きさにより表面が不安定化することを数値計算により確かめた。この分岐解析を進めることが次の計画である。
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