研究課題/領域番号 |
17K05320
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
前川 泰則 京都大学, 理学研究科, 准教授 (70507954)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 非圧縮性粘性流体 / 偏微分方程式 / 高Reynolds数流体の安定性 / 特異極限問題 / Navier-Stokes方程式 |
研究実績の概要 |
1967年にR. FinnとD. R. Smithにより構成された2次元外部領域におけるオゼーン定常流の安定性について研究を行い,空間遠方で十分速く減衰しかつ十分小さな摂動に対してはこの定常流が漸近安定であることを示した.これは数学的には半世紀近く未解決であった2次元外部の流れの安定性問題に対して初めて肯定的な結果を与えるものである.本研究成果は単著論文として現在国際誌に投稿中である.また,ENS(Paris)のIsabelle Gallagher氏及び京都大学の檜垣充朗氏との共同研究により,高速回転する2次元単位円の外部の流れに現れる境界層構造を数学的に明らかにした.特に,Airy関数が境界層の構造として自然に現れることを示した.本研究成果は共著論文としてまとめられ,現在国際誌に投稿中である.また,パリ第7大学のDavid Gerard-Varet氏と2次元半空間におけるNavier-Stokes定常流の非粘性極限における挙動について共同研究を行った.自然なソボレフ空間の枠組みのもと,逆流の無いshear flow周りにおいて定常流に対するPradntl境界層漸近展開を数学的に正当化した.これはPrandtlにより1904年に提示された定常流に対する境界層展開を非自明な問題設定のもとで初めて数学的に正当化するものであり,極めて重要な成果である.証明ではOrr-Sommerfeld方程式と呼ばれる4階の常微分方程式の解析が中心的な役割を果たしている.本研究成果は共著論文としてまとめており,国際誌に投稿するべく準備している.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
2次元外部におけるOseen定常流の安定性や2次元半空間におけるNavier-Stokes定常流のPrandtl境界層展開は長年にわたる重要な未解決問題であり,本研究課題によるこれまでの研究はこれらに対して本質的なブレークスルーを与えている.これは当初の想定を大きく上回る成果である.
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今後の研究の推進方策 |
高速回転する2次元単位円周りにおける定常流れについて,長時間における漸近安定性は大きな未解決問題であり,今後の研究課題である.詳細なレゾルベント解析とレゾルベントパラメタに応じた境界層解析を行うことでこの問題の解決を目指す.また,Navier-Stokes定常流の非粘性極限問題について,ブラジウス境界層周りにおけるPrandtl境界層展開の正当化は未解決である.これまでに得られたshear flow周りでの研究成果を大きく発展させることでこの問題の解決を試みる.
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた理由:購入物品が予定よりも安価となったため. 使用計画:次年度使用額は極めて微額であり図書の購入等で処理される見込みである.
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