昨年度までに引き続き Chunhua Li氏、西井良徳氏、佐川侑司氏と共同で、弱い消散構造を伴う非線形シュレディンガー方程式についての研究を行った。特に1次元ユークリッド空間において3次の微分型非線形項を伴う場合の初期値問題の解について、時刻無限大における解のL^2の意味での減衰の様子を明らかにすることが主目標である。解の大域存在を保証する構造条件(A)と、時刻無限大において解の漸近形に対数的な位相修正が生じるための構造条件 (A_0)、および非線形項が解に消散的に作用するための構造条件(A_+)の3つを比較したとき、通常のべき乗型非線形項の場合には(A)が満たされれば(A_0)または(A_+)のいずれかが満たされることは簡単に確認できるが、微分型非線形項の場合には「(A)は満たされるが(A_0)と(A_+)のいずれも満たされない」という中間的な場合があり、我々はこのような非線形項を「弱消散的」(weakly dissipative)と呼んで主たる考察対象としてきた。昨年度の時点では、δを任意に小さい正の数として、解のL^2ノルムが log t の (-1/4+δ)乗のオーダーで上から評価されることまでは示されていたが、その最適性や下からの評価については全く未知であった。今年度はこの点について考察を進め、弱消散的な場合には log t の-1/4乗が最適なL^2減衰オーダーであることの証明に成功し、満足できる結果に辿り着くことができた。
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