研究課題/領域番号 |
17K05323
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
石渡 通徳 大阪大学, 基礎工学研究科, 教授 (30350458)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | エネルギー臨界 / 熱方程式 / 非コンパクト性 / バブリング / 時間大域解 |
研究実績の概要 |
ユークリッド空間上で定義された、ソボレフ臨界指数を持つ半線型放物型方程式(エネルギー臨界熱方程式)の時間大域解の漸近挙動、特にソボレフノルムの時間大域的有界性に関する研究を行った。このクラスの方程式はスケール不変性を持つため、時間大域的挙動は「空間全領域での非自明定常解がスケールによって凝集したもの(バブル)の重ね合わせになる」といういわゆる「ソリトン分解予想」に従うと考えられているが、現在までこれを厳密に証明した例は存在しない。本研究では当初、バブルの周りのリャプノフ逓減法と爆発解析を併用する手法を考えており、基本理論の展開と個別事実の計算に多くの時間を要すると考えられていたが、リャプノフ逓減法の代わりに実解析的プロファイル分解定理と放物型方程式に対する基本手法であるエネルギー法を用いることで、煩雑な計算を行うことなく上記時間大域的有界性を示すことができた。 臨界型関数不等式に付随する変分問題の研究では、可換ゲージ場とカップルしたハーディ型不等式の最小化問題を考察した。類似の系は、正準交換関係の表現論の観点から解析され、磁束が量子化されていることと、物理的運動量を含む正準交換関係の表現がシュレーディンガー表現と同値になることは知られていたが、表現の非同値性と具体的な変分問題の可解性の関係は知られていなかった。本研究では当初の予想通り、表現の同値性と最小化問題の可解性が対応することが分かった。また、この過程で、可解性を特徴づける幾何学的量として「逓減されたコホモロジー」の概念が有効であることがわかりつつある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画していたエネルギー臨界熱方程式の時間大域解のソボレフ空間における時間大域的有界性の研究は、リャプノフ逓減法と爆発解析を併用する大掛かりなもので、基本理論の展開と個別事実の計算に多くの時間を要すると考えられていたが、リャプノフ逓減法の代わりにプロファイル分解とエネルギー法を用いることで煩雑な計算を行うことなく上記事案大域的有界性を示すことができたため、おおむね順調に進展していると判断した。臨界型関数不等式の査証化問題に関する研究では、当初の目論見通り可換ゲージ場と相互作用するハーディ型不等式に付随する変分問題の可解性が、磁束の量子化と密接に対応することが分かった。この結果も当初の計画とほぼ同じペースであるので、おおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
プロトタイプである半線型熱方程式について、エネルギー臨界の場合に、ソボレフ空間での時間大域的有界性を示すことができた。本研究で開発された手法と知見は、個々の方程式の細部の構造によらず、エネルギー散逸の存在するスケール不変な方程式系であれば適用可能と思われる。今後は後方自己相似変換されたエネルギー臨界熱方程式。エネルギー臨界消散型波動方程式、スケール不変な重み関数をもつエネルギー臨界放物型方程式、ケラー・シーゲル型方程式系など、類似の構造を持つ系について同手法が適用可能かを検討する。また、ナビエ・ストークス方程式についても、ソボレフ空間での時間大域的有界性とプロファイル分解の観点から、どのような知見が得られるかの検討を開始する。 臨界型関数不等式については、現在可換ゲージ場と相互作用するハーディ型不等式に付随する変分問題の解析が終了しつつある。これは領域のコホモロジーがゲージ場の磁束の量子化を通じて最小化元の存在・非存在に影響を及ぼすというものであり、幾何学的視点と解析学的視点の共同が必要なものであった。今後は当該研究を論文化すること、およびゲージ場を非可換ゲージ場に拡張した場合、さらにゲージ場が量子化されている場合にどのような知見が得られるかを検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
繰越額と翌年度分予算とを合わせ、適切に執行する。繰越額は少額であるので、一回分程度の旅費に繰り込んで使用する予定である。
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