研究課題/領域番号 |
17K05328
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
筧 知之 筑波大学, 数理物質系, 教授 (70231248)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | シュレディンガー方程式 / 基本解 / 帯球関数 / 対称空間 / ワイル領域 / 平均値作用素 |
研究実績の概要 |
対称空間上のシュレディンガー方程式の基本解を構成するうえで、対称空間上の帯球関数の詳細な解析は必須である。本年度は、帯球関数の幾何解析的性質を平均値作用素を用いて研究した。高階対称空間上の平均値作用素はワイル領域の元(rとする)でパラメーターづけられ、rは一般には高次元のユークリッド空間の元となる。(階数1の場合、0<rとなる。)そして、対称空間をXとし、X上の滑らかな関数全体からなる空間からそれ自身への連続線形作用素として、平均値作用素Mrが定まる。前年度までに得られた結果は以下の通りである。(1)rが十分大きく、かつ、ワイル領域の境界から離れている場合、平均値作用素Mrは全射となる。本年度の研究で、この結果を大幅に発展させることが出来た。得られた結果は次の通りである。(2)ワイル領域の境界まで含めて、ほとんどすべてのrに対して、平均値作用素Mrは全射となる。この研究成果を、沖縄市で開催された研究集会「解析学の壺」および、姫路で開催された国際研究集会「Himeji Conference on Partial Differential Equations」で発表した。尚、これは、研究協力者であるFulton Gonzalez教授(アメリカ、タフツ大学) および、Jens Christensen教授(アメリカ、コルゲート大学)との共同研究に基づく。ちなみに、平均値作用素は合成積作用素となっており、その超関数核のフーリエ変換が帯球関数となっている。この意味で、帯球関数は平均値作用素と密接に関係しており、上記の研究成果から帯球関数について多くの知見を得ることが出来た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の研究計画とは研究方法の面で若干の違いは生じたが、想定内であり、むしろ、対称空間上の帯球関数の大域的挙動に関して、研究開始前に予想していたこと以上の知見を得ることが出来た。更に、研究計画から派生する形で、波動方程式などへの新しい応用を見出すことが出来た点を考慮し、総合的に見て、おおむね順調である、と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
当初の研究経過に従って、対称空間上のシュレディンガー方程式の基本解の構造を、様々なやり方で調べる。具体的には、帯球関数の漸近的性質の考察、基本解の数論的、表現論的な考察および超局所解析的な考察に基づいて研究を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
3月に外国出張を計画していたが、国際研究集会を3月に開催したため、延期となった。尚、研究発表、研究連絡で何度か出張したが、旅費使用額はこちらで想定していた使用額を大幅に下回るものとなった。これは、筑波大学の旅費支出規定が他大学のものと大幅に異なり、極めて少ない額の旅費しか支出されていないことが判明したからである。なお、次年度使用額の超過分については、外国人招へい、研究集会開催、最終年度で論文をまとめるための備品(コンピューター、プリンターなど)の購入に充てる計画である。
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