研究実績の概要 |
最終年度については、対称空間上のシュレディンガー方程式に関わる対称空間上の波動方程式の研究を行った。対称空間上のシュレディンガー方程式と波動方程式は、帯球関数を通して互いに密接に関係している。シュレディンガー方程式の基本解の幾何解析的性質を調べるため、本研究の研究代表者は、ゴンザレス教授(タフツ大学)、クリステンセン教授(コルゲート大学)、ワン氏(タフツ大学)と共同で、対称空間上の修正された波動方程式に対するスナップショット問題を考察した。これは、コーシー問題とは異なり、いくつかの時刻における波動方程式の解のデータを与えた時、そこから任意時刻における解を構成できるか?という問題である。上記3氏との共同研究により、非コンパクト対称空間上の修正された波動方程式に関して、t=0, a, b の3つの時刻における解のデータを滑らかな関数として与え、かつ, 比a/bが無理数の場合は、任意時刻での解が滑らかな関数として存在するという結果を得た。この結果は、ユークリッド空間上ではフリッツ・ジョンによって研究されているが、それ以外に系統的な研究は存在せず、対称空間上では全く新しい結果である。また、この結果は波動方程式の逆問題への応用が強く期待される。さらに、本研究者が行っている別の研究課題「対称空間上の合成積作用素の幾何解析と積分幾何及び逆問題への応用」(研究課題/領域番号21K03264)とも密接に関係している。尚、対応するコンパクト対称空間上の修正された波動方程式についても同様の問題を考えることができるが、こちらについては、まだ、部分的な結果が得られているのみであり、引き続き研究を続行中である。最後に、本研究に関係する論文を国際学術誌Journal of Functional Analysis, Vol.280, No. 2(2021)に掲載したことを報告しておく。
|