研究課題/領域番号 |
17K05329
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
吉野 正史 広島大学, 理学研究科, 教授 (00145658)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | ボレル総和法 / バーコフ標準形 / ハミルトン系 / blowup / 半線形波動方程式 / 線形化問題 / 接続問題 / ホモロジー方程式 |
研究実績の概要 |
今年度は研究計画に挙げた3つの目的を達成するため「1.(ボレル総和法の)ベクトル場変換論への適用」および「2.非線形波動方程式の爆発解のprofileの接続と力学系の変換論」を重点事項として研究を進めた。このため、実施計画のうち特に「偏微分方程式のparametric Borel sumの大域解析」「半線形波動方程式の特異解と爆発解の構成とボレル和を基にした複素大域解析」を重点的に研究した。項目1に関しては、まだ研究途中であるが得られた成果は数理研講究録に公表した。他方、項目2はかなり進展がえられ、3編の国際誌での研究論文発表のほか数理研講究録にも2編を公表した。項目1は次年度も研究を継続する。項目2では、次年度はボレル総和法とのより深い関係を追及していく。 これらの成果の意義は、力学系におけるバーコフ理論の視点から、偏微分方程式の解の爆発を調べる方法を提示したこと、ベクトル場の変換論特に線形化問題にボレル総和法及びその大域解析の視点からの新しいアプローチの方法を提示した点である。それ以外の研究成果は以下の通りである。 (1) 2018年6月28日にパドバ大学(イタリア)で開催された国際会議FASPDE18で招待講演。(2) 2018年9月3日からの1週間、 The Banach Center School, Complex Differential and Difference Equations,Bedlewo,(2018)での連続招待講演。(3) 2018年9月13日, Banach center(ポーランド)での国際会議での招待講演。(4)2018年10月17日に京都大学数理解析研究所で開催された国際研究集会で講演。(5)2018年12月20日に京都大学数理解析研究所で開催された国際研究集会で講演。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究において主な研究目的は、1.ボレル総和法の大域解析を用いてベクトル場の変換論を発展させること、2.ボレル総和法を超多自由度生態系モデルに用いてデータ解析を行うこと、3.非線形波動方程式の解の爆発現象を力学系理論のバーコフ理論を用いて行うことである。そのための実施計画として、偏微分方程式に対するparametric Borel summability の大域理論の構成、および、動く特異点を持つ常微分方程式の解を用いて偏微分方程式の爆発解を構成、moment Borel 総和法と middle convolution 理論の関係の解明、超多自由度生態系の漸近展開理論の構成の4つの方向から研究を進めてきた。この4つの研究計画のうち、最初の2つはこの2年間でかなり進展してきている。実際、2年間で9本の論文(うち査読付き6本)を発表し、国際会議での招待講演も4回実施した。したがって、これらの研究計画の目標とした研究の目的1と3はかなり達成されたといえる。他方、実施計画のうち他の2つはまだ研究途中であり、現在のところ、成果は十分に満足できるものではなく、当初想定したほどの成果は得られていないと判断する。したがって、これら2つの研究計画と密接につながる研究のうち、目的2はまだ十分に達成されていない状況である。しかしながら一定の成果は得られてすでに公表論文も出版されている。これらの状況を勘案して、2年間の研究成果として研究は「おおむね順調に進展している」と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
本研究は次年度が最終年度になる。次年度の研究計画はおおむね当初の研究計画に沿って実行する。研究期間が次年度で終了するので、現在のところ、予定より遅れている研究テーマを実施するためかなり進展している他の研究テーマの実施を意図的に遅らせるというようなことはしないで、むしろ進展しているテーマの研究をより進めることを優先する。従って、偏微分方程式に対するparametric Borel summability の大域理論の構成、動く特異点を持つ複素領域の解の構成を用いて爆発解の構成をおこなう研究を重点的に進める。他方、研究目的2「ボレル総和法を超多自由度生態系モデルに適用して環境汚染・破壊の評価モデルに応用する」については、半年後までの研究の進展状況をみて「環境汚染・破壊の評価モデルに応用する」部分はやめて数学的な理論構成特にボレル総和法との関係に集中して研究するということを予定している。理由としてはこの研究は異分野の研究者との共同研究という面もあるので短期間の成果を出しにくいということがある。この点では研究計画を適切に修正して成果を出すようにする。他方、外国との研究交流は研究の実施のため有意義であり、次年度も計画通り積極的に進める。国際会議での講演も実施する。また今までの研究から明らかになった点として、ボレル総和法の大域解析を利用して非線形方程式の動く特異点を調べたり、偏微分方程式の解の爆発現象を調べるということが、より一般的な設定の問題でも可能であることがわかってきたので、その方向で研究を実行することでより本質的な理解に近づくようにする。また研究のとりまとめと将来への発展のための検討についても次年度の後半において実施する。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた理由は、年度末の3月に広島大学で研究集会を開催した時、講演者に旅費を支給する予定であったがそれが不要になったことおよび消耗品費が予定したより少なかったことによる。この次年度使用の助成金は、広島大学で通年で開催している複素解析セミナーの講演者に対する旅費として使用する予定である。これにより当該研究に関係したより多くの研究者を招聘して当該研究に役立たせることを計画している。
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