研究課題/領域番号 |
17K05331
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
池畠 優 広島大学, 先進理工系科学研究科(工), 教授 (90202910)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | The enclosure method / Inverse problems / Inverse obstacle problem / Fractional diffusion |
研究実績の概要 |
主に二つある. (1) 3次元空間において時間微分が空間変数に依存する分数べき拡散方程式によって支配される新しい型の障害物逆問題を提出しその典型的場合において囲い込み法の実現を考察した.分数べき時間微分は有界領域内部の滑らかな境界を持つ未知の開集合(物体)の境界付近において背景の既知の一定の分数べきから不連続に飛んでいるという従来の飛びの条件とともにそれをゆるめたしかし連続性よりも強い飛びの条件まで満たすものも対象としている. この問題に対して, 一組のCauchyデータを用いた時間領域における囲い込み法を実現しこの未知の物体の幾何学的情報を抽出する公式を確立した. 得られた情報は, 領域の外部に任意に与えられた点を中心に持ちその外部が未知の物体を含む最大の球の半径の値および任意に与えられた点を中心に持ち物体を内部に含む最小の球の半径の値の二つである. (2) (1)での研究の結果いずれ(1)の問題とも関係することになると期待される,3次元の時間周期的な波動方程式すなわちHelmholtz方程式に対する逆源泉問題および不連続な倍脂質による障害物逆問題において囲い込み法一組のCauchyデータを用いた囲い込みを確立した.とくにその際重要な源泉領域の特異点と囲い込み法に現れる方向から決まる複素数の係数について源泉が錐的特異性を持つ場合について詳細に解析した. その結果特異性が円錐状である場合その頂点の座標を陽に決定する公式とともに向いた方向を決定する5次方程式を見出したのは特筆すべき点である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
時間微分が空間変数に依存する分数べき拡散方程式によって支配される新しい型の 障害物逆問題において時間領域における一組のCauchyデータを用いる囲い込み法が典型的な場合において実現できたのは予想以上である. これは時間領域における囲い込み法の適用範囲を今後格段に拡げるものと期待される.
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今後の研究の推進方策 |
時間微分が空間変数に依存する分数べき拡散方程式によって支配される新しい型の 障害物逆問題およびそれに関連する逆問題を徹底的に追求する. 国際会議で諸成果を発表し結果の周知および研究討論によりさらなる進展を図る.
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍のため予定していた研究発表, 研究討論や研究集会のための出張が中止となり使用できなかったのが大きな原因である. そこで本年度についてはオープンアクセス掲載料やさらなる研究のための環境整備とくに研究資料や論文作成および研究 発表のためのさまざまな物品の購入に充てたい.
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