研究課題/領域番号 |
17K05335
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研究機関 | 琉球大学 |
研究代表者 |
眞野 智行 琉球大学, 理学部, 准教授 (60378594)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | モノドロミ保存変形 / 平坦構造 / 複素鏡映群 / パンルヴェ方程式 |
研究実績の概要 |
平坦構造とそのプレポテンシャルを持たない場合への一般化、および線形微分方程式のモノドロミ保存変形との関係について研究を行った。今年度の成果はいくつかあるが、そのうち主要なものについて述べる。 1)プレポテンシャルを持つ場合の平坦構造(あるいはフロベニウス構造)とモノドロミ保存変形のτ関数との関係およびそれらの解析的表示を得た。最初に述べたように本研究課題の最も主要なテーマは平坦構造と線形微分方程式のモノドロミ保存変形との関係を調べることである。平坦構造についてはプレポテンシャル(あるいはポテンシャルベクトル場)が非常に基本的な量あり、モノドロミ保存変形についてはτ関数と呼ばれる関数が非常に基本的な量である。これらの基本的な量の間の直接的な関係を調べることは非常に重要な問題である。今年度の成果ではこの関係を部分的にではあるが明らかにし、特にモノドロミ保存変形の一般解に対して、そのτ関数の平坦座標を用いた解析的表示を得た。これは平坦座標の収束級数になっており、幾分予想外の結果であった。モノドロミ保存変形の理論における平坦座標の意味を探る上で非常に重要な結果であると考えられる。 2)複素鏡映群に対する多重鏡映面配置の自由性についての問題を解決した。実鏡映群に対する多重鏡映面配置の自由性についてはすでに証明されていたが、複素鏡映群については未解決であった。本研究課題に関する成果である、複素鏡映群の軌道空間上の平坦構造の構成を応用して、超平面配置の専門家である海外の研究者との共同研究においてこの問題を解決した。この結果は本研究課題の重要性と他分野への影響を示すものである。 これらの成果について国内外の研究会で発表し、論文を執筆した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
課題申請時当初の年度計画とは順序が前後してしまったが、平坦構造(あるいはフロベニウス構造)のプレポテンシャルとモノドロミ保存変形のτ関数との関係が明らかになり、特にそれらの解析的表示についての結果を得たことは非常に意義が大きい。また本研究課題の主題である理論の応用として、多重鏡映面配置の自由性という問題が解決されたことは本研究課題の重要性や他分野への影響を示すものである。またこれらの成果について国内外における研究会での成果発表や論文執筆を行った。このように研究は順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題について今年度得られた成果からの知見により、研究の範囲は当初より広がりつつある。当初から計画していた課題とともに、それから発展してきた課題についても取り組みたい。まずはプレポテンシャルを持たない平坦構造についてのポテンシャルベクトル場とモノドロミ保存変形のτ関数との関係を明らかにする。特にτ関数の平坦座標による解析的表示を目標とする。これは今年度得られた結果の直接的拡張である。ここまでの話は大久保型(あるいは確定特異点型)の線形微分方程式に関するものであるが、次にこれを一般大久保型(あるいは不確定特異点型)の線形微分方程式に関して拡張する。特にτ関数の解析的表示は確定特異点型とは様相をかなり異にすることが予想され、興味深い問題である。これらの問題と並行して、複素鏡映群と特異点の変形理論との関係について考察する。実鏡映群の場合には特異点の変形理論との関係及び、それから特異点の変形のパラメータ空間上に平坦構造が導かれることが比較的よく分かっている。複素鏡映群の場合にはいくつかの簡単な例を除いては特異点の変形理論との関係が分かっていない(そもそもそういう関係が存在するかについても不明である)。そこで複素鏡映群と特異点の変形理論との関係を明らかにし、それを用いて特異点の変形のパラメータ空間上に平坦構造を導入することを目的とする。できれば一般論を構築することが望ましいが、とりあえずは非自明な例に対してこれらの構成を遂行し一般論構築のための足掛かりとする。
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次年度使用額が生じた理由 |
参加予定だった研究集会にスケジュールの都合により参加できなかった。 次年度、研究集会参加のための旅費として使用する。
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