研究実績の概要 |
前年度より引き続き、平坦構造とそのプレポテンシャルを持たない場合への一般化、および線形微分方程式のモノドロミ保存変形との関係についての研究を進めた。今年度の研究成果について述べる。 1)本研究課題の最も主要なテーマである平坦構造と線形微分方程式のモノドロミ保存変形との関係について、これまでの研究で得られた成果などをまとめた専門書の執筆を行った。この原稿を書き進める過程で「Okubo-Saitoポテンシャルの空間」という新しい概念が発見された。この概念を中心として理論構成の抜本的な書き直しを行った。 2)well-generatedな複素鏡映群の自然表現についてその群作用に関する軌道空間上に(計量を持たない)平坦構造を構成したが、この構成を用いてwell-generatedな複素鏡映群の鏡映面から定まる多重鏡映面配置が自由多重超平面配置になることが証明されていた。この結果についてもOkubo-Saitoポテンシャルの空間に対する重さの変換という観点からまとめられることが分かってきたので、書き直しを行った。 3)本研究課題の成果である平坦構造と線形微分方程式のモノドロミ保存変形との関係を利用して、パンルヴェ方程式の解と平坦構造を結び付けることができる。この関係を利用すると、パンルヴェ方程式の解に対して定まる 3つ組(M,D,Δ)が不変量を与えることが分かった。これは昨年度得られた見地をより精密化したものと言える。パンルヴェ方程式より(真に)簡単なガウスの超幾何方程式の場合に 3つ組(M,D,Δ)を正確に求め、Okubo-Saitoポテンシャルの空間を求めてみた。これは今後の研究を行う際の方向性を示す指針を与える例となるであろう。
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