研究課題/領域番号 |
17K05337
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研究機関 | 東京理科大学 |
研究代表者 |
立川 篤 東京理科大学, 理工学部数学科, 教授 (50188257)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 解析学 / 変分問題 / 弱解の正則性 / double phase / 変動指数を持つ汎関数 / Orlicz空間 |
研究実績の概要 |
非標準的増大度(Non-dtandard Growth)をもつ汎関数を適当なソボレフ空間において局所的に最小化する関数の正則性に関する研究が本研究の主題である.平成29 年度に引き続き,非標準的増大度を持つ汎関数のうち,特に,べき乗関数とある程度近い振舞いをするN-関数と呼ばれる関数Φに対して,Φ-growthと呼ばれるタイプの特殊な場合(|Du|のべき乗×対数というタイプ)について,その局所的最小点となる関数の部分的正則性の結果を領域の境界まで拡張し,さらに境界上には不連続点が存在し得ないことを示した.これらはナポリ・フェデリコ2世大学数学科のFlavia Giannetti准教授, Antonia Passarelli di Napoli准教授との共同研究であり,この結果をまとめた論文は先日Forum Mathematicumに掲載受理された. 一方,Colombo - Mingioneらによって導入されたDouble Phaseと呼ばれるタイプの汎関数(∫(|Du|のp乗)+a(x)(|Du|のq乗)dx,(ただし,a(x)は0以上の関数))について,Catania大・Maria Alessandra Ragusa教授と共同研究を行っている.このタイプの汎関数はa(x)が0となるところで はp-growth, a(x)>0となっているところではq-growthとなり,|Du|に関する増大度のが不連続的に変化するのことから生じる困難さがある.このタイプの汎関数に対して,各phaseにおける指数p,qがxの関数となっている場合について,前出のColombo-Mingioneらの内部正則性に関する結果を拡張することに成功した.この結果も論文としてまとめ,先日,Advances in Nonlinear Analysisに掲載受理された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初困難が予想されていて,本研究課題の期間全体を通して研究する予定であったdouble phaseタイプの汎関数の変動指数を持つ場合対しても,その極小値を与える関数の正則性について第一歩とも言うべき満足すべき結果を得ることができた.
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今後の研究の推進方策 |
引き続きΦ-growthとdouble phaseの問題の2本立てで研究していく. Φ-growthの問題に対しては,境界上の正則性を得る過程で,いわゆるblow-upと呼ばれる方法を用い,そこで必要な「収束性補題」と呼ばれる結果を得た.これに,あと「単調性補題」と呼ばれる補題を得られれば,次元降下法と呼ばれる議論を用いることにより,特異点集合のハウスドルフ次元に対する評価を改善することができるので,当面はそれを目指す. 変動指数を持つdouble phaseの問題に対しては,最も単純な場合に対して,内部での正則性しか得られていないので,より一般的な場合への拡張を目指すとともに,境界上での正則性も研究する.
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次年度使用額が生じた理由 |
ナポリ大・Nicola Fusco教授を招聘する際,ヨーロッパを代表する著名な研究者であり,また年齢的にも若くはないため,ビジネスクラスの航空券を準備した.当初航空券見積もりが60万円を超す高額であったため,急遽「前倒し請求」をした.しかし,その後インターネット経由で同じフライトの航空券を捜したところ,結果的に30万円弱で購入することが出来た.そのため,当初の見積額との差に相当する30万円ほどの次年度使用額が生じた.
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